『ウ・ヨンウ』『ザ・グローリー』歴史的な大混戦! 第59回百想芸術大賞受賞結果を予想

第59回百想芸術大賞の受賞結果を予想

 韓国のゴールデングローブ賞と称される「百想芸術大賞」が今年もやってくる! 4月7日に部門別の最終候補が発表されると“歴代級”との言葉が飛び交い、早くも盛り上がりをみせている模様。4月28日に韓国で生放送され、日本からはTikTokでの生中継にて一緒に楽しめる予定だ。

 59回目を迎える「百想芸術大賞」は、歴史と権威を兼ね揃えたテレビ・映画を扱う韓国で唯一の総合芸術賞。審査対象となるのは2022年4月1日から2023年3月31日まで地上波、ケーブル、OTT、ウェブで提供されたコンテンツ。視聴率や話題性だけでなく芸術性の観点から選考され、エンターテインメント業界を代表する専門家によって選出された審査員が公正かつ厳格な審査を行う。韓国エンタメ界の祭典として「百想芸術大賞」が見逃せない理由は、選ばれし名作や各部門での受賞者がここで決まるからである。

 今回注目なのは、8部門にノミネートされた『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』と『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』。作品、演出、脚本、俳優のそれぞれの部門でノミネートされている点から、大ヒットした話題性だけでなく完成度の高さも評価されている。また作品賞のノミネート作品が全てNetflixで配信されているように、世界的にも評価を受けた作品が鍵となりそうだ。前回は『イカゲーム』がテレビ部門の大賞、演出賞、芸術賞を受賞しており、国内だけでなく国外での評価が大きなポイントとなっていた。以上のことを踏まえ、各部門での受賞を予測していこう。

作品賞

『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』Netflixにて独占配信中

『私の解放日誌』
『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』
『私たちのブルース』
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』
『シスターズ』

 どの作品も配信サービスで視聴できるため、全作品を観たファンも多いであろう。前回は『D.P. ー脱走兵追跡官ー』が受賞し、ノミネート作品も青春、時代劇、社会派と多様なジャンルが揃っていたが、今回は全て現代劇であるのが特徴である。

 2022年の韓国ドラマはヒロインが主役の作品が目立ち、作品賞にも反映されている。三姉妹が主人公の『シスターズ』、解放を望む女性を映した『私の解放日誌』、復讐のために生きる女性を描いた『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』、自閉症スペクトラム症の女性弁護士が主役の『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』。唯一『私たちのブルース』はそれぞれの世代の生き様が描かれており、幅広い層の支持が厚く、ノ・ヒギョン作家が作り上げた物語とキャラクターに豪華俳優陣が見事に溶け込んでいた。この先二度と観られない傑作ドラマだ。

 さて、世界的なヒットを記録し、シンドロームを巻き起こした『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』がテレビ部門の大賞と仮定すると、社会的なメッセージや全体的なバランスがまとまっていた『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』が受賞するのではと予測する。

脚本賞

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』 Netflixにて配信中

キム・ウンスク『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』
ムン・ジウォン『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』
パク・へヨン『私の解放日誌』
チョン・ソギョン『シスターズ』
ホン・ジョンウン、ホン・ミラン『還魂』

 脚本賞も全員が女性脚本家である。ホン・ジョンウン、ホン・ミラン姉妹の『還魂』はファンタジーロマンスドラマを大きくアップデート。難しいテーマを多くの人に優しく届けた『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』、先の読めない展開で視聴者を引き込んだ『シスターズ』。そして筆者は、いじめ、復讐、未来を描いた『ザ・グローリー〜輝かしき復讐〜』、または、息苦しい日常から解放されるための言葉が並べられ、「私を崇めて」が生まれた『私の解放日誌』と予想する。どちらも新しいテーマではないものの斬新さがあった。

演出賞

キム・ギュテ『私たちのブルース』
キム・ソギュン『私の解放日誌』
キム・ヒウォン『シスターズ』
ユ・インシク『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』
イ・ジュヨン『アンナ』

芸術賞

ノ・ヨンシム『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(音楽)
リュ・ソンヒ『シスターズ』(美術)
チャン・ジョンギョン『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』(撮影)
ファン・ジンヘ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(視覚効果)
ソン・ナクフン、チョ・ジンヒョン、ファン・インウク『人気歌謡祭』(撮影)

 印象に残っているのは『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の独特な効果音。ヨンウがひらめいた時のBGMはアカペラグループが音を奏でている意外さもあった。また『シスターズ』では“青い蘭”や壁紙、ドールハウスなど、始まりから終わりまで幻想的な美術に視覚がとらわれた。今回は上層階級と貧困層の格差を、映像や音楽など繊細な演出で描いた『アンナ ディレクターズカット版』が高く評価されるのではないだろうか。

最優秀演技賞(男性)

『私の解放日誌』(JTBC公式サイトより)

ソン・ソック『私の解放日誌』
イ・ビョンホン『私たちのブルース』
イ・ソンミン『財閥家の末息子〜Reborn Rich〜』
チョン・ギョンホ『イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜』
チェ・ミンシク『カジノ』

最優秀演技賞(女性)

『シュルプ』(tvN公式サイトより)

キム・ジウォン『私の解放日誌』
キム・ヘス『シュルプ』
パク・ウンビン『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』
ソン・ヘギョ『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』
ぺ・スジ『アンナ ディレクターズカット版』

 最優秀演技賞(男性)は、『財閥家の末息子〜Reborn Rich〜』で圧倒的な存在感があったイ・ソンミンか『私たちのブルース』で心を震わせる演技を見せたイ・ビョンホンが強いが、作品を代表していたのはイ・ソンミンである。『私の解放日誌』で一躍ブレイクしたソン・ソックの人気は演技力も高く評価されているため受賞も十分にあり得る。

 最優秀演技賞(女性)は、3回連続ノミネートとなった『シュルプ』のキム・ヘスの絶対的な実力とカリスマ性は健在。新境地を見せたという点では『アンナ』のぺ・スジを押したいところだが、やはり唯一無二のヒロイン像を熱演した『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のパク・ウンビンか『ザ・グローリー〜輝かしき復讐〜』のソン・ヘギョが最も有力だと注目されている。最も愛されたヒロインという点ではパク・ウンビンが選ばれる可能性が高いだろう。

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