『地獄楽』『マッシュル-MASHLE-』にみる小林千晃の求心力 なぜ主役抜擢が続く?

小林千晃、『地獄楽』など主役抜擢なぜ続く?

 アニメファンから熱烈に愛される名作となりそうな作品の放送が、続々と始まったこの春。注目のラインナップの中で、原作からすでに高い人気を誇る2つの作品で主演を務める声優がいる。それが、小林千晃だ。4月に放送開始されたアニメで小林は『地獄楽』の画眉丸、『マッシュル-MASHLE-』のマッシュ・バーンデッド(以下、マッシュ)をそれぞれ演じる。

 過去作でも『憂国のモリアーティ』のルイス・ジェームズ・モリアーティ役や『天官賜福』の扶揺などの人気キャラクターを演じ、着実に実力派声優としてのキャリアを切り開いてきた小林。さまざまな声優誌の表紙を飾り、ラジオでの活躍もみせるなど、その活躍はアニメ作品だけにとどまらない。今の声優界において、小林の存在は強く求められている。

 なぜこれほどまでに、小林が主演として抜擢されるのか。それは、近年のアニメ作品における“癖のある主人公”への人気が背景にあるのではないかと考える。近年、人気作品とされるアニメの中でもいわゆる王道な正義感を振りかざして戦うヒーローは減り、主人公の葛藤や二面性にスポットライトを当てる作品が増えてきた。

TVアニメ『地獄楽』第一弾PV

 小林が主演で演じるキャラクターは、「心に誰かへの想いを秘めた主人公」であるケースが多い。この想いとは、恋愛的な意味だけではなく、家族愛や友愛をも含んでいる。主人公に必要な親しみやすさを兼ね備えながらも、キャラの気持ちを細かく拾う小林の演技は、今の時代のアニメが求める“主人公の声”なのだ。実際に今期の2つの作品をみてみると、それが詳しくわかるだろう。

 『地獄楽』の主人公・画眉丸は、元・忍の里の石隠れ衆筆頭で多くの人を殺してきた死罪人だ。血も涙もない残虐な姿から“がらんどう”と称された彼は、いつしか「がらんの画眉丸」と呼ばれるように。ありとあらゆる手段で死刑が執行されるが、画眉丸は一向に死ぬことができない。

 その理由は、画眉丸自身が生への執着を持っていたからだと最後の処刑で明かされる。がらんどうと畏れられた画眉丸が心から欲していたものは、愛する妻との平穏な生活だった。

「人並みに……そんなものどうせ叶わんのだ!」

 山田浅ェ門佐切の言葉によって、これまで隠されていたスイッチを押されたかのように、人が変わる画眉丸。佐切とのバトルシーンでは、剣技に合わせた息づかいや、声に籠る覇気など、小林の緻密な演技が光る。前半ではどこか気の抜けた様子だった画眉丸は、生への執着を取り戻すことで声まで熱くギラつき始めた。佐切と共に極楽浄土とされる島へ向かった画眉丸に、小林はこれからどのような主人公の声を与えていくのだろうか。

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