松山ケンイチ×長澤まさみ、“ベスト”だった初共演を語り合う 仕事を続ける上での原動力は?

松山ケンイチ×長澤まさみ、初共演を語り合う

 先日最終回を迎えた『100万回 言えばよかった』(TBS系)や、現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』での好演も話題の松山ケンイチ。4年半ぶりに主演を務めたドラマ『エルピス —希望、あるいは災い—』(カンテレ・フジテレビ系)が各方面で高評価を得た長澤まさみ。そんな名実共に日本の映画・ドラマ界を支えている2人が、社会派エンターテインメント映画『ロストケア』で初共演を果たした。介護士でありながら42人を殺めた殺人犯・斯波宗典を演じた松山と、その彼を裁こうとする検事・大友秀美を演じた長澤に、初共演だからこそ生まれた名シーンや、第一線で活躍し続けている原動力について、話を聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

松山「長澤さんが入って成立した部分が大きかった」

ーー今回、松山さんは企画の段階から作品に携わっていたそうですね。

松山ケンイチ(以下、松山):前田(哲)監督と、これはきっと自分たちもいつか直面することで、みんなが向き合っていかなければいけない問題だから、映画として表現したいよね、ということをずっと話し合いながら進めていたんです。結局最初に話してから10年ぐらいかかっちゃってるんですけど。

ーー10年もかかっているんですね。

松山:“エンターテインメント”とはまたちょっと違いますし、多くの人が蓋をしてしまっているというか、先延ばしにしてしまっているような、すごく難しい問題なので、配給会社が手を挙げてくれるのか、興行的に成り立つのかなど、この物語を映画としてどう成立させるかは大きな課題でした。それでも僕たちは絶対にやりたいと思っていて。そんな中で、長澤さんが入ってくれたんです。それで成立した部分が大きかったですね。

長澤まさみ(以下、長澤):私自身、すごく興味がある問題でした。どんな内容なんだろうと思いながら台本をいただいて読んだときに、共感する部分がとても多くて。この台本に惹かれたところが大きかったです。

(左から)松山ケンイチ、長澤まさみ

ーーお二人は今回初共演なんですよね。それが結構意外でした。

長澤:映画祭とかでお見かけすることはあったのかもしれないんですけど、ちゃんと覚えてなくて……(笑)。ただ、お話はもちろん、挨拶もしたことはなかったと思います。

松山:僕はいつもテレビとか映画で観てたので、勝手に会った気でいたんですけど……(笑)。そういえば話したことないし、一緒に演技したこともなかったな、という感じでしたね。ただ、僕が演じる斯波と長澤さんが演じる大友は、映画の中で初めて対峙する関係でもあるので、それも利用できるし、すごく面白くなるだろうなと思ったんです。もし過去に何度か共演していたら、2人の空気感を作るのも大変だった気がするんですけど、初共演だからこそ、どうやって現場にいるのかも含めて、芝居は組み立てやすかったです。今回、初共演というのは本当にベストだったなと思います。

ーー長澤さんはお芝居をする上で、“現場で生まれるもの”を大事にしていらっしゃるとか。

長澤:そうですね。セットの感じとかも、事前に写真で見せてもらったりすることもあるんですけど、実際現場に行くと印象が違ったり、物の位置とかも現場に行ってみないとわからない部分があるので。家で想像していたのと一緒になったことは一度もないんですよね。現場でどのように変わっていくのかを瞬時に感じていかなければいけない仕事だと思うので、いつもなかなか大変なんですけど、今回はそういう意味では気が楽でした(笑)。やっぱり、お互いのことをあまり知らない人と仕事をするほうが楽なんですよね。

ーーそうなんですか?

長澤:その方がいろんな感情を抜きにできるじゃないですか。知ってると変に気を遣ってしまったり、余計な感情が出てきてしまって、面倒だなと思ってしまうこともあるので……。それがないままお芝居に集中できる環境は、やっぱりありがたいです。

ーー映画の終盤、取調室でお二人が対峙するシーンは、松山さんと長澤さんにしか生み出せないものが画面に焼き付いていたように思います。

松山:それはやっぱり初共演というのが大きかったですね。斯波も大友も、お互い「この人は何なんだ?」というところから始まっていて、あの取調室のシーンにつながっていく。斯波には、大友に何かを伝えないと、何かを残さないと、という思いがどこかにあったと思うんです。だけど、それを限られたセリフの中で伝えていかなければいかなかったので、ずっと目で訴えていました。大友が何を思うかはわからないけど、何か伝わってほしいな、という気持ちでしたね。そんなふうに思えるのは、やっぱり初めて一緒に演技をする人だからなのかなと思いました。あのシーンは僕もすごく印象に残っています。

長澤:松山さんは目が本当に印象的で。“松山さんの目を見ると、目を逸らせない”という気持ちになりながら、取調室の撮影はやっていました。松山さんの目に本当に吸い込まれそうで。大友もどこか斯波に取り込まれていくというか、どんどん斯波のペースに持っていかれてしまうということを私自身も感じながら撮影していたので、もしかしたら松山さんの思っていることが自分に伝わってきたのかなと今話を聞いていて思いました。本当に作り物みたいな目の綺麗さでビックリして……(笑)。

松山:ははは(笑)。

長澤:お芝居でいろんな俳優さんと目を合わせることがあるんですけど、目を合わせていても、相手の気持ちがこっちに向いていないときはそれがわかるんですよね。撮り方次第ではそれが正解なときもあるから、一概に“気持ちがこっちに向いていないといけない”とは言えないんですけど、松山さんの目からは純粋な思いを感じました。綺麗すぎて怖かったです。

松山:ありがとうございます(笑)。

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