『ソロ活女子のススメ』に流れる心地いい距離感 人気の理由は江口のりこの“フラットさ”

『ソロ活女子のススメ』江口のりこの魅力

 江口のりこが主演を務める『ソロ活女子のススメ3』が4月5日よりテレビ東京ほかで放送される。本シリーズでは、江口演じるダイジェスト出版編集部の契約社員・五月女恵が、ただただ一人で好きな場所に行き、好きなことをして一人の時間を満喫する。

 五月女が一人行動する間は、アフレコスタイルで彼女の心情がそのまま垂れ流しになる。一人ツッコミをしたり、場違いだと少し怯みそうになったり、大袈裟ではない日常生活のリアルさと可笑しみが滲む。五月女が自身の心の赴くままに、だからと言って“自分はおひとりさまで何だってできてしまえる”というような排他的な雰囲気を一切纏うことなく、純粋に自身の好奇心を満たしている姿が心地いい。お一人様であることに卑屈さも諦めも感じておらず、本当に彼女が心からそのスタイルを楽しんでいる。「おひとりさまの極意」を説くものでは決してないところも本作の魅力の1つだろう。

 大きな事件が起こるわけでもなく、浮つきすぎることもなく、五月女が新しいことに出会っていく様子を、江口は言葉少なにその表情や佇まいの変化だけで見せる。江口の唯一無二たる所以は、わかりやすい記号的な形容詞を纏っていないところにあるように思える。様々な作品の中で強烈な個性を放つことができるのに、キャラが濃いということがない。だからこそ、本作では様々な景色の中に溶け込むものの、自分の世界やパーソナルスペースは保ったまま溶け込みすぎることなく一期一会の出会いを堪能し、また新たな興味関心ごとに自然とスライドできる五月女の付かず離れずの心地いい距離感とマッチするのだろう。

『ソロ活女子のススメ』にみる、“おひとりさま"の進化 時代による変換と後ろめたさの払拭

江口のりこ主演で、女性のソロ活を描いたドラマ『ソロ活女子のススメ』(テレビ東京)。現在第3話まで放送されている本作は、出版社に務…

 江口は、映画『愛がなんだ』では、マモちゃん(成田凌)が尊敬の念を抱きながらベタ惚れする年上女性・すみれ役で、掴み所のない何にも規定されないような女性を演じたかと思えば、『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系)では、その対極にいるようなスミレ役を演じた。池脇千鶴演じる主人公が働く物流倉庫のリーダーで、ぶっきらぼうで自分にも他人にも厳しく周囲と壁を作ってしまい誤解されやすいが、実は人一倍責任感が強く、情に厚い人間臭さを秘めたいじらしい役どころを好演した。

 さらに『これは経費で落ちません!』(NHK総合)では、主人公が働く経理部に途中入社してきた麻吹美華役を演じた。周囲から誤解を招きやすい不器用さ、裏表のなさが光る役どころで、最初は近寄りがたいのに知れば知るほど気になって愛着が湧いてくる人物像を立ち上げた。

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