『相棒』全話が現代社会への大切なメッセージに 右京×亀山に再会できる日を願って
3月15日放送の『相棒 season21』(テレビ朝日系)最終回のキーワードは、ずばり「正義」。真実を追究し、正義を貫く意志が人一倍強い右京(水谷豊)とその愛弟子といえる亀山(寺脇康文)は、盗まれた元官房室長・小野田(岸部一徳)の遺骨奪還と事件の真相解明に向けて、精力的に捜査を進めていた。
犯人である「13」が「小野田公顕は預かった」と犯行声明を残していたことから、右京は、この事件は盗難事件ではなく、人質事件のようだと考えていたが、その予想通り、遺骨を盗まれた13家族の元に身代金を要求するメッセージが届く。それは動画配信サイトの特定の配信者に「1万円を投げ銭しろ」というもの。犯人が学生ではないかと疑っていた右京と亀山は、その受け渡し方法と金額から確信を強めていく。
すぐ出せるような身代金であるはずだが、小野田家と真野家の2家族がすぐに受け渡しを拒否。右京たちは真野家を訪れ、中学生の正義(柴崎楓雅)と出会った。彼の名前は正義と書いてジャスティスと読む。本人は「キラキラしすぎて目眩がします」と自分のキラキラネーム具合に苦笑気味だが、周りからは「ジャス」と呼ばれて親しまれていた。春休み中だというジャスは最近、通っている私塾「ながとろ河童塾」のメンバーと関西旅行をしたという。実は、犯人「13」からの1つ目のメッセージは、すべて関東の大回り乗車の路線上から、2つ目のメッセージは関西の大回り乗車の路線上から投函されていた。
怪しく思った右京は、次に「ながとろ河童塾」の塾長・葛葉宰三(渡辺いっけい)の元へ。右京から事件のことを詳しく聞いた葛葉は、不審に思い、自身の寺を探し始める。するとそこには盗まれた12個の骨壷が。伊丹(川原和久)らの取り調べで葛葉は、ジャスたちに「今のような時代になったのは団塊世代のせいだ」というようなことを話してしまったという。これは「13」からの1つ目のメッセージの内容と合致する。
TikTokを思わせる動画配信サイト、キラキラネーム、団塊の世代、少子化。随所に散りばめられた言葉はまさに今、連日何かと話題になっている問題のキーワードだ。未来を考えたときに不安になってしまうジャスの友人たちや、自分より上の世代の人たちへの行き場のない怒りを抱える葛葉のような人たちも少なくないだろう。『season21』には、たとえばAIのようなIT技術を駆使した「将来、起こりそう」と思わせる未来型犯罪はほとんどなく、逆に、社会の問題を巧みにあぶり出し、視聴者に考えることを促すものが多かった。右京を演じる水谷豊の年齢もあり、いつ終わってもおかしくないといわれている『相棒』。それを考慮するとエピソード一つひとつが現代社会への大切なメッセージのようにも考えられるのではないだろうか。