『ザ・グローリー』は単なる復讐劇で終わらない ソン・ヘギョらが紡ぐヒューマンドラマ

『ザ・グローリー』単なる復讐劇で終わらない

 ソン・ヘギョ&イ・ドヒョンらが出演するドラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』のパート2が、3月10日からNetflixで配信スタートした。

 第1話~第8話のパート1では、激しいいじめシーン、そして「笑わない」ソン・ヘギョの演技と綿密に練られた復讐計画が話題となった。また、自らも心に傷を負いながらも「剣舞を踊る処刑人」になる決意をしたイ・ドヒョンの温かく、芯の通った演技に魅了された人も多かっただろう。

 いよいよ復讐を実行する時がきたソン・ヘギョ演じるムン・ドンウン(高校時代:チョン・ジソ)。

 パート2では、ドンウンの復讐に動揺する加害者5人のパート1を上回るおぞましい姿が描かれ、その一方でドンウンとチュ・ヨジョン(イ・ドヒョン)の仲にも進展があった。果たしてドンウンは、復讐を成し遂げることができたのだろうか? そしてヨジョンの心の傷に対する決着はつけられたのか?(以下、最終話までのネタバレあり)

ソン・ヘギョらの団結力が、イム・ジヨンらを圧倒

「加害者たちと被害者たち。どちらの団結力が強いかな……ヨンジン」

 第3話でドンウンがつぶやいていた言葉だ。その答えがパート2で、はっきりと出る形となった。結論からいうとドンウンは、しっかりと復讐を果たすことができたのだ。

 綿密に練られた計画をジワジワと実行し、かつて自分をいじめてきたパク・ヨンジン(イム・ジヨン、高校時代:シン・イェウン)、チョン・ジェジュン(パク・ソンフン、高校時代:ソン・ビョングン)、イ・サラ(キム・ヒオラ、高校時代:ぺ・ガンヒ)、チェ・へジョン(チャ・ジュヨン、高校時代:ソン・ジウ)、ソン・ミョンオ(キム・ゴヌ、高校時代:ソ・ウヒョク)を追い詰めていくドンウン。

 注目したいのは、ドンウンをいじめていた時は、ヨンジンの命令で団結していた5人が、あっという間にバラバラになっていったことだ。

 自分のことしか考えていない加害者5人の心の内を読むことは、辛酸をなめてきたドンウンにとって、むしろ簡単なことだったのかもしれない。そして期待どおり、5人は保身のために仲間を売り、裏切り、傷つけ合うようになる。

 夫からDVを受けているヒョンナム(ヨム・ヘラン)に協力を依頼する時、ドンウンは「違法なことはするけれど、血で手を汚すことはない」と説明していた。果たして血で手を汚さず復讐を成し遂げることが可能なのだろうかと疑問に思ったが、ドンウンは、5人がどういう行動をとるのか、すべて読んだ上で計画を実行していたわけだ。追い詰められた5人がドンウンに代わって互いに傷つけ合うことを先刻承知していたのだ。

 やられたらやり返すヨンジンは、ドンウンにダメージを与えるため策を練るが、やりたい放題、言いたい放題やってきたヨンジンの人生に敵は多く、最終的にはサラの裏切りで過去のいじめ動画が出回り、大打撃を受ける。ちなみにサラをたきつけたのはへジョンだ。

 夫に離婚を言い渡され、娘のイェソルには「もう自慢のママじゃない」と言われ、挙句の果てには、母親にも裏切られてすべてを失い、殺人の罪で刑務所に入ることになる。華やかな世界で生きていくことを疑っていなかったヨンジンにとって、味方が誰もいなくなるということは、耐えがたいことだといえるだろう。

 短絡的ですぐ頭に血がのぼるジェジュンは、ヨンジンの娘・イェソルが、本当は自分の娘であることがわかり、取り返したいと必死になる。かねてからジェジュンに好意を持っていたへジョンを利用し、イェソルを手に入れようとするが、へジョンの恨みを買い、ジェジュンの泣きどころである目を攻撃され、最後はハ・ドヨン(チョン・ソンイル)らしき人物の手で抹殺されてしまう。

 欲にまみれたミョンオは、ドンウンと同じ船に乗ると思いきや、ヨンジンたちだけでなくドンウンも脅迫する始末。しかし結局、ヨンジンに殺されてしまい、哀れな姿となって発見される。そしてミョンオの葬儀でサラとへジョンは言い争いになり、サラはへジョンの首元を刺し刑務所に入り、へジョンは命が助かったものの声を失う。

 加害者5人それぞれにとって、最も耐え難い苦痛を味わうこととなり、ドンウンが望むとおり、悲惨な最期を迎えることになった。

 一方で、孤独な戦いを続けてきたドンウンのために「剣舞を踊る処刑人」となったヨジョンとDV夫を殺す代わりに協力を申し出たヒョンナム。

 ヨジョンがドンウンを裏切ることはないだろうと思っていたが、ヨンジンがヒョンナムに近づいてきた時は少しドキドキしてしまった。ドンウンとヒョンナムのやり取りが心温まるものだったので、裏切ることがないように祈っていたが、杞憂に終わった。ヨンジンがヒョンナムに近づいてくることをドンウンは予想しており、ヒョンナムはヨンジン側に付くふりをして、上手く立ち回った。

 ヒョンナムがドンウンに対してどれだけ感謝しているか。これを理解できずに「私がドンウンよりも早く夫を殺してやる」と自分の側につくことを提案するヨンジンの薄っぺらい人間性に呆れるばかりだ。

 苦しい人生を送ってきたドンウンとヒョンナム。他人の痛みが分かる彼女たちは、いつの間にか強固な絆で結ばれ、その団結力は強く、加害者たちのもろい関係を一網打尽したといえるだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる