『星降る夜に』素直に泣くことの難しさを痛感 最終話で深夜の“復讐”の意味は描かれるのか

『星降る夜に』素直に泣けるまっすぐな一星

 きっと哀しみにくれて泣く人を抱きしめることは、「一緒に生きよう」と心を蘇生させているのではないか。心臓が止まったらマッサージをするように、背中をさすってあげることで冷たくなってしまいそうな心を動かす。もしかしたら「お父さん大丈夫?」と泣く娘を抱きしめていた伴は、「大丈夫」と娘をあやしながら逆に心が温められ、なんとか生きてこられていたのかもしれない。

 とはいえハグの文化がない日本では、なかなか一星のようにまっすぐに抱きしめることができる人は少ないように思う。それどころか人前で感情的になることがよくない雰囲気さえある。泣くことも、抱きしめることも不器用なこの国は、哀しみの寄り添いが苦手な人の多い国とも言えるかもしれない。

 だから乗り越えたように見えても、実際は哀しみを押し込めているだけということも。妻とお腹の子を亡くしたときから家を10年間そのままにしている深夜(ディーン・フジオカ)のような場合もある。伴からも「乗り越えたような顔しやがって」と言われたが、深夜は伴とまた違った形で苦しんでいる。

 妻と子の死に対して1度も涙を流すことのなかった深夜。学生時代からの友人である千明(水野美紀)も、泣かない彼にどう寄り添っていけばいいのかわからない。たくさん助けてもらった鈴も、今度は深夜のために何かできたらと思うのだがその方法が見つからない。

 そんな深夜が医者になった理由として「復讐」という言葉を使ったのが気になるところ。しかし、観ている私たちの心をも抱きしめてくれるこのドラマのことだ。伴が泣きじゃくることができたように、深夜の苦しみも解きほぐしてくれるのではないかと願ってやまない。

 そして次週は、いよいよ最終回。予告編を見ると一星と春(千葉雄大)、深夜に伴も銭湯でリラックスしている場面が見えて嬉しい。どうやら深夜の家の遺品整理が行われるようだ。誰が悪くなくとも、哀しい出来事は起こる。どうしたって苦しみがない世界は作れない。けれど、そのあとに続く人生に希望が持てる。そんな心がポカポカと温まるラストを迎えてくれると信じている。

■放送情報
『星降る夜に』
テレビ朝日系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:吉高由里子、北村匠海、ディーン・フジオカ、千葉雄大、猫背椿、長井短、中村里帆、吉柳咲良、駒木根葵汰、若林拓也、宮澤美保、ドロンズ石本、五十嵐由美子、寺澤英弥、光石研、水野美紀
脚本:大石静
監督:深川栄洋、山本大輔
ゼネラルプロデューサー:服部宣之
プロデューサー:貴島彩理、本郷達也
音楽:得田真裕
制作:テレビ朝日、MMJ
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/hoshifuru_yoruni/
公式Twitter:@Hoshifuru_ex
公式Instagram:@hoshifuru_ex

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