『ブラッシュアップライフ』ハハハと笑える結末を願う やり直しを通して描いた大切なもの

『ブラッシュアップライフ』が描く大切なもの

 しかし、麻美が5周目の人生やり直しに突入したのは、親友たちの命を救うため、そして来世よりも今生をよりよいものにするためだった。第8話で真里が過去親友だった3人の死を回避するために人生をやり直し続けていることや、1周目の人生で同僚だった美奈子(三浦透子)から「1周目の人生が気に入っていたから毎回同じ人生をなぞっている」という話を聞き、人間に生まれ変わることよりも大切なことに気づく。

 視聴者の中には、徳を積むことが先行し、やり直して来た人生が麻美にとって本当によいものだったのか? という疑問を持つ人も多かったはずだ。生まれ変わりがあることや人生をやり直せるかもしれないということは、現実世界を生きる私たちにとっては知り得ない話であり、結局はファンタジーに過ぎない。しかし、悲劇的な何かが起こることを知っていた場合に、それを回避するためどう行動するかを考えたことがある人は多いだろう。確実に人間へ生まれ変われる切符を手にした麻美が、それを捨ててよりよい今世を送るため、そして飛行機事故で死んでしまう運命を辿ることになる親友2人やその他大勢の人を救うため、真里と結託して今世を生き直す。そんな展開に、ファンタジーでありながらもこれまで劇的な物語を描いてこなかったからこそ心に刺さるものがあった。

 これまでの4周の人生やり直しをかけて本作が描いてきたのは、家族や友人、会社の同僚など“人生における人との関わり合いの大切さ”だ。バカリズム脚本の軽快な会話劇を通して、他人と関わることで人生が成り立っていることを意図せず意識させられるような構成になっていたことが、8話目にして明確になったのだ。

『ブラッシュアップライフ』が肯定するすべての人生 バカリズムの集大成と言える一作に

回を増すごとに面白さにドライブがかかってきている『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)が、折り返し地点を過ぎた。2度目の死を…

 第8話のエンディングではウルフルズの「笑えれば」が採用された。1周目の真里の人生において麻美たちが真里と歌うはずだった曲でもあるが、麻美が最後の人生やり直しを「とにかく笑えれば 最後に笑えれば」と感じているようにも受け取れる。誰かのために今世を生き切る決意をした麻美が、今世の終わりにハハハと笑えることを願わずにはいられない。

■放送情報
日曜ドラマ『ブラッシュアップライフ』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:安藤サクラ、夏帆、木南晴夏、松坂桃李、染谷将太、黒木華、臼田あさ美、鈴木浩介、バカリズム
脚本:バカリズム
演出:水野格、狩山俊輔
プロデューサー:小田玲奈、榊原真由子、柴田裕基(AX-ON)、鈴木香織(AX-ON)
チーフプロデューサー:三上絵里子
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/brushup-life/
公式Twitter:@brushuplife_ntv
公式Instagram:@brushuplife_ntv

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