『大病院占拠』鬼の“正体”から“目的”へシフトする考察 新たに見えた警察内部の“裏切り者”

『大病院占拠』鬼の“正体”から“目的”へ

 突然現れた“紫鬼”によって拉致されたえみり(吉田帆乃華)を救出するため、三郎(櫻井翔)に与えられたタイムリミットは1時間。2月11日に放送された『大病院占拠』(日本テレビ系)第5話は、ドラマ前半のクライマックスを迎える。バディである相模(白州迅)を見つけ、一緒にえみりを探して町中を車で走り回る三郎と、あらゆる方策を駆使して手掛かりを見つけようとする指揮本部。一方、世論からの反感を危惧する鬼たちのなかでじわじわと不協和音が巻き起こる。

 前回のエピソードの終盤、ついにお面を外した桃鬼(浅川梨奈)と灰鬼(水橋研二)の常陸親子。桃鬼は自分の目の前で撃たれた佐渡(阪田マサノブ)の容態を気にし、血気盛んな橙鬼(森田甘路)と茶鬼(大水洋介)と衝突する。その一連のなかで灰鬼が言う「関係ない人は傷つけない約束」という言葉。第3話で緑鬼(村上淳)が娘の復讐のために土佐(笠原秀幸)に銃を向けたように、鬼たちの目的のひとつには病院関係者らへの復讐があることは明白である。とはいえここでわかるのは、佐渡は“関係ない人”。つまり播磨(津田寛治)や土佐のような“罪”を持たない、単なる人質に過ぎないということだ。

 橙鬼が第3話のラストで見ていたスマホ画面に写っていた人物のことや、前回描かれた医師の甲斐(西原亜希)と常陸親子の関係など、緑鬼以外の鬼たちのバックグラウンドについては依然として伏せられたままである。そして今回、えみりを助けようと必死になる三郎や裕子(比嘉愛未)の姿に心を痛めている様子が見受けられる白鬼と、それに寄り添う黄鬼。第2話のセリフで二人が夫婦であることが示されていたが、今回の二人の姿と青鬼のセリフからは、彼らには子どもを失った過去があるのだと読むことができる。

 そしてその白鬼の正体は真飛聖、黄鬼の正体は柏原収史であると判明。さらにずっと病院内に潜伏して撮影を続けていた因幡(明日海りお)は鬼たちに見つかり(ライブ配信をするあたり、鬼たちにあえて見つかろうとしたのだろう)、青鬼との“コラボインタビュー”をセッティングする。それを契機にして、一気に残りの鬼たちもお面を外す。赤鬼が忍成修吾で黒鬼がベッキー。そして青鬼が菊池風磨と、大方の予想通りの顔ぶれでかえってすっきりした気分になるではないか。次回からの後半戦では、ドラマのフックとなるものが“鬼の正体”から“鬼の目的”へとシフトする。それはつまり、ドラマとしての奥行きが一気に広がる兆しでもある。

 また、三郎がえみりを無事に救出したことや、佐渡の緊急手術のために警察から送り込まれた看護師が警察官であるという情報が鬼たちにメールされてくる一連からは、ドラマ終盤のもうひとつのフックとなるであろうものが見えてくる。警察内部しか知り得ない情報を、鬼たちに流す内通者がいる。その人物が“紫鬼”であるかはまだ判然としないが、もしそうであるならば、指揮本部内にいない誰かということになる。新たな誰かが登場するよりも、すでに登場している誰かが“裏切り者”である方が、ドラマとしては大いに盛り上がるところだ。

■放送情報
『大病院占拠』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00~放送
出演:櫻井翔、比嘉愛未、ソニン、白洲迅、宮本茉由、ぐんぴぃ(春とヒコーキ)、平山浩行、津田寛治、稲葉友、阪田マサノブ、笠原秀幸、筒井真理子、渡部篤郎、菊池風磨(Sexy Zone)、忍成修吾、真飛聖、柏原収史、ベッキー、水橋研二、浅川梨奈、森田甘路、大水洋介(ラバーガール)、村上淳
脚本:福田哲平、蓼内健太
演出:大谷太郎、茂山佳則(AX-ON)、西村了(AX-ON)
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:尾上貴洋
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:Snow Man 「W」(MENT RECORDING)
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/dbs/
公式Twitter:@dbs_ntv
公式Instagram:@daibyoinsenkyo_ntv

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