『100万回 言えばよかった』悠依と直木がすれ違う歯がゆさ 事件の背景が次々と明らかに

『100万回 言えばよかった』2人の思い

 直木の存在を感じられればよいのだという悠依と、悠依のそばにいればいるほど自分の無力さを痛感する直木。悠依と譲(松山ケンイチ)と距離を縮めていく様子を、ただ見守ることしかできない。譲に嫉妬しながらも、譲に頼るしかない歯がゆさ。そんな苛立ちもあって2人はケンカをしてしまう。

 だが、そのケンカをきっかけに悠依の記憶のフタがひとつ開くことになる。場所は、約20年前に悠依が莉桜(香里奈)と、その友人で殺害された涼香(近藤千尋)と遊びに行った遊園地だ。ここで悠依と莉桜もケンカをした。「こっちに来るな」そのときもこう言われたことを思い出したのだ。

 「こっち」とは、きっと犯罪がすぐ近くにある場所。10代の少女たちが「グーミー」と呼ばれる男の運転するワンボックスカーに乗せられてどこへ向かったのか。直木が返そうとしていた500万円という大金がどのように動いて莉桜の私物の中にあったのか……想像するものは限られてくる。

 あのとき「こっちに来るな」と言った莉桜が、直木が殺された今になって悠依のもとに現れ、同じ言葉を発した。その意味は、これ以上事件の背景を探ると直木と同じように巻き込まれることになるのだという警告なのだろう。莉桜が過ごしてきた20年間は、どんなものだったのだろうか。そして、謎の配達員・ 希也(永島敬三)との関係性も気になるところ。

 さらに、その男がまた少女たちの近くにいるのも心をざわつかせる。あのときのグーミーと同じように彼女たちを送迎しているのだろうか。その存在を知ってか知らずか、彼女たちにお菓子作りを教えている千代(神野三鈴)の存在が、どこか子ども食堂を運営している英介(荒川良々)とも重なって見えなくもないが、果たして……?

 次々と明らかになっていく事件の背景を知るにつれて、改めて「普通がいい」と言っていた直木と悠依が、どうしてこんなにも物騒な事件に巻き込まれてしまったのかと思う。それぞれの複雑な家庭の事情から、出会いこそ里親の家という珍しいパターンだった。いや、だからこそ普通に恋愛をして、普通に結婚して、普通に年を重ねていく日々に憧れを抱いたのかもしれない。その胸元には「すっごく普通」なプレゼントのネックレスが輝いていて……そんな未来が待っているはずだったのに。

 悠依の未来のために事件が解決した暁には「成仏したい」と願う直木。一方で「直木しかいない。絶対に諦めない」と強く誓う悠依。そんな2人が、死をも分かつことのできないラブストーリーを紡いでほしいと願ってやまない。悠依もそうだと思うが私たち視聴者も、直木の体が見つかったときよりも本当の意味で彼が死んでしまったことを実感せざるを得ない“成仏して消えてしまう”その瞬間が、今から怖くて仕方がないのだ。

■放送情報
金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:井上真央、佐藤健、シム・ウンギョン、板倉俊之(インパルス)、少路勇介、穂志もえか、近藤千尋、桜一花、香里奈、平岩紙、春風亭昇太、荒川良々、松山ケンイチ
脚本:安達奈緒子
プロデューサー:磯山晶、杉田彩佳
演出:金子文紀、山室大輔、古林淳太郎
編成:中西真央、吉藤芽衣
主題歌:マカロニえんぴつ「リンジュー・ラヴ」(TOY’S FACTORY)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/100ie_tbs/
公式Twitter:@hyakumankai_tbs
公式Instagram:hyakumankai_tbs

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