『少年のアビス』心の深淵を覗き込む異色の青春ドラマ 松井玲奈の怪演から目が離せない
ナギの抱える深淵に触れなければ、令児は今までと同じ日常を過ごしていたのかもしれない。そう考えると、本作のアビスとは、令児だけではなく登場人物すべての心の深淵とその奥底に潜む怪物のことなのかもしれない。
やがて物語は、内なる怪物に気づいた女性たちが令児を奪い合う壮絶な戦いへと変わっていくのだが、興味深いのは女性たちの中に母親の夕子も含まれていることだ。家族を支える犠牲者に見えた夕子だが、彼女の中にも深淵に潜む怪物がいたことが明らかになる。
一方、興味深い立ち位置にいるのが、幼なじみの少年・峰岸玄。当初は令児を抑圧するいじめっ子のように思えた玄だが、彼もまた令児に異常な執着を持っていることがわかってくる。彼の本心が明らかになる最終話は注目である。
どの登場人物も魅力的だが、松井玲奈の怪演もあってか、柴ちゃん先生の面白さが突出しており、彼女の暴走から最後まで目が離せなかった。
恋愛に限らず、他者と深く関わるということは、相手の深淵に潜む怪物を見つめる行為なのかもしれない。その結果、逆に自分の中にいる怪物に気づいてしまうことは、客観的に見れば哀しいことだ。だが、暴走する柴ちゃん先生の活き活きとした表情を見ていると、深淵に潜む怪物の存在に気付くことは、悪いことだけではないのかもしれない。善意を隠れ蓑に、生徒の令児を支配しようとする姿は教師として最低だが、人としてはどうにも嫌いになれない。
■リリース情報
『少年のアビス』
発売中 ※レンタル開始中(全2巻)
<Blu-ray BOX>
価格:14,400円(税抜)
<DVD-BOX>
価格:11,400円(税抜)
【封入特典】
・ブックレット
【映像特典】 ※約52分
・メイキング
・予告集
※仕様は変更となる場合あり
※収録内容、商品の仕様等は予告なく変更となる場合あり
出演:荒木飛羽、北野日奈子、本田望結、堀夏喜、和田聰宏、片岡礼子、松井玲奈
原作:峰浪りょう『少年のアビス』(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載中)
監督:かとうみさと、湯浅弘章
脚本:狗飼恭子
制作プロダクション:ホリプロ
製作:「少年のアビス」製作委員会・MBS
発売元:「少年のアビス」製作委員会
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©︎峰浪りょう/集英社 ©︎ドラマ「少年のアビス」製作委員会・MBS