『舞いあがれ!』山下美月の清々しく美しい笑顔 久留美×佳晴が互いに描いていた幸せ

『舞いあがれ!』山下美月の美しい笑顔

 『舞いあがれ!』(NHK総合)第84話では、久留美(山下美月)のもとへやってきた八神(中川大輔)が両親を必ず説得すると約束する。八神の母・圭子(羽野晶紀)は結婚に反対するだけでなく、久留美の父・佳晴(松尾諭)が定職に就いていないことを問いただした。深く落ち込んだ久留美はデラシネで一部始終を舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)に報告する。

 「反対されんのはええねん」「けど……お父ちゃんのことであんな言われ方されるとはなぁ……」と久留美は心境を打ち明けた。少し間を置いて、久留美はやや苦々しい表情で「お父ちゃんもお父ちゃんやねん。土下座なんてしてほしなかった」と口にする。父親を情けないと感じてしまった久留美だが、静かに耳を傾けていた貴司は佳晴の気持ちを察して、久留美にこう伝えた。

「必死やったんやろうな、おっちゃん」
「どんだけかっこ悪くてもなんとか娘に幸せになってほしいっていう親心とちゃうかな」

 一方、佳晴もまた、うめづで一部始終を道子(たくませいこ)や勝(山口智充)、雪乃(くわばたりえ)に打ち明けていた。落ち込む佳晴を道子が力強く励ますが、佳晴は卑屈になってしまっている。「久留美にとったら俺は呪いみたいなもんなんや」「俺から解放されな、久留美は幸せになられへん」とこぼす佳晴を、勝と雪乃が制止する。

「子供の気持ち、勝手に決めつけたらあかんで」
「佳晴さんの痛みや苦しみも、よう分かってくれてるはずやて」

 久留美は父の、佳晴は娘の幸せを願っている。久留美を演じる山下美月の複雑な心境がうかがえる表情にも、佳晴を演じる松尾諭のビールをあおる自虐的な表情にも、お互いを思いやる気持ちが滲んでいる。

 うめづへやってきた八神が佳晴に頭を下げた後、望月家の何気ない生活が映し出された。久留美はいびきをかいて眠る父を起こさないように気遣いながら、スーツをハンガーにかける。翌朝、久留美と佳晴はリラックスした様子で「おはよう」と言い合う。2人の飾らない生活は一つの幸せの形といえる。看護に関連する本とトロフィーの間にある500円玉貯金も、望月家ならではの幸せの形なのではないか。

 お互いを思う父と娘はすれ違う。八神は佳晴に就職先を紹介し、定職に就くよう促していた。けれど、それは久留美が望む幸せの形ではなかった。

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