『ボーンズ アンド オール』ルカ・グァダニーノ、ティモシー・シャラメとの再タッグを語る

『ボーンズ アンド オール』監督が語る

 2月17日に日本公開される『ボーンズ アンド オール』の監督を務めたルカ・グァダニーノのコメントが到着した。

 『君の名前で僕を呼んで』に続きティモシー・シャラメとグァダニーノ監督が再タッグを組んだ本作は、“人喰い”という宿命を背負った若者たちを描いた“禁断の純愛ホラー”。第79回ヴェネチア国際映画祭では、監督賞となる銀獅子賞と新人俳優賞(テイラー・ラッセル)の2冠に輝いた。

 主人公のマレン(テイラー・ラッセル)は本能的に“人を喰べたくなる衝動”を抑えられない。転校した学校で出会ったばかりの同級生の指に喰らいついてしまう。父親に見放されてしまった彼女は、自分の居場所を求めて孤独な旅を始める。ある日、ミニマートで女性客をからかう酔漢に立ち向かう華奢な青年の姿が目に飛び込んでくる。彼の名はリー(ティモシー・シャラメ)、彼女と同じ“人喰い”だ。二人の旅の途中、「誰も傷つけたくない」と問いかけるマレンに、リーは「喰わなきゃ生きていけない」と叫ぶ。

 誰にも言えない秘密を抱えた二人についてグァダニーノ監督は、「社会の片隅で生きる人々や権利を剥奪された人々に、私はえも言われぬ魅力を感じ、心打たれる。私の作る映画はすべて、社会の“のけ者”を描いている。『ボーンズ アンド オール』の登場人物にも共感を覚えた」と、原作小説を基にしたデヴィッド・カイガニックが執筆した脚本との出会いを振り返る。また、「不可能な愛、権利を剥奪された人々、そして自分の居場所を探すという夢を描いている。二人の若者が自分の居場所がないと気づき、その場所をつくろうとする物語だ。マレンとリーが自分らしさを探すのは極限の状況下だが、彼らが自問自答しているのは誰でも共感できる『自分とは何者なのか?』『何を欲しているのか?』『自らに課せられた運命に対する気持ちからどう逃げるのか?』『どうやって他者とのつながりを見いだすのか?』という問いかけだ」と、作品の核心についても述べている。

 『君の名前で僕を呼んで』に続いて2度目のタッグとなったリー役のシャラメについては、「ティモシーは好奇心旺盛で、とても気さくで人間味あふれる俳優だ。だが、同時に非常に現代的なものをうまく取り入れることができる。それはこの映画に不可欠な要素だった。リーとして、彼は現代的な感覚をもたらしている。リーの不安な気持ちを表現する一方で、人を思いやる心も見せていて、観ていると胸が張り裂けそうになる」と、彼の演技の進化も観逃せないポイントだとグァダニーノ監督は指摘する。

 一方、そんなシャラメの相手役となる主人公マレン役のラッセルについては、「本能に従って演技をすると、不思議な境地にたどり着くことが多い。何かに逆らった演技ではないので、良いことだと思う。人生の不思議さにただ身を委ねている感じ」だったと本能の赴くままに直感的な演技を目指したという。ラッセルを通して、自身にとってのマレンが完成していったと語る監督は、「テイラーは、マレンをある時は捉えどころなく、またある時は頑なに演じることができて、嫌悪感をもたれるかもしれない性質を探究していった。しかもそのすべてが、テイラーが強い共感を込めることによって際立った。彼女はマレンの欠点をかなり痛々しく表現した」と彼女の演技力を讃えている。

 グァダニーノ監督が「ラブストーリーが描かれるアメリカンロードムービーだ」と指摘する本作。リー役のみならず製作にも名を連ねたをシャラメは、「孤独を乗り越えようともがく二人の人物というアイデアは、多くの人々がさまざまな理由で疎外感を感じているこの時代に、とくに心に響いた」と大共感した模様。シャラメとの再タッグが決まったグァダニーノ監督は、単身アメリカに乗り込み約1カ月間のロケハンを敢行し撮影に臨んだ。

 そんな舞台となるアメリカについて、「自己改革の道が常に開かれている一方で、多くの人が取り残されている。そこには、驚くべき開放性やもてなしの心、寛容さだけでなく、孤独も存在していた」と感じたと話すグァダニーノ監督。『ボーンズ アンド オール』の時代設定は1980年代のアメリカ中西部、携帯電話もまだ普及していない時代だ。早い段階から、リーとマレンが辿る道と同じルートで撮影することを決めていた監督は、「登場人物がアメリカを移動する道のりを、私たちも撮影スタッフとして移動した。メリーランド州から始まり、オハイオ州、ネブラスカ州、インディアナ州、ケンタッキー州と、5つの州で撮影をおこなった。常に移動しながら、すべて実在する場所で撮影した」と振り返っている。

 さらにグァダニーノ監督は観客に向けて、「観客には発見をテーマにしたこの旅路に参加してほしいと思っている。『彼らは何者なのか?』『彼らの行動の理由は?』『彼らは何を学んだのか?』『そして物語を通して、私たちは自分について何を学ぶことができるのか?』この映画がそんなことを考える機会になってほしいと願っている。私が思うにこの映画は『自分とは誰か?』『自分のなかで制御できない感情をどう乗り越えるのか?』について考えるときの瞑想のようなものを描こうとしている。そして最後の問いは『いつになれば他者の視線のなかに自分を見いだすことができるのか?』だ」とメッセージを寄せている。

(左から)クロエ・セヴィニー、ティモシー・シャラメ、ルカ・グァダニーノ監督、テイラー・ラッセル、マーク・ライランス
ルカ・グァダニーノ監督

■公開情報
『ボーンズ アンド オール』
2月17日(金)全国公開
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ティモシー・シャラメ、テイラー・ラッセル、マーク・ライランス
配給:ワーナー・ブラザース映画
映倫区分:R18+
©2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.
公式サイト:Bonesandall.jp

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