CGの功罪? 『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』の奇妙な撮影方法

『パイレーツ・オブ・カリビアン』CGの功罪

 本作はかなりCGの印象が強く、ジョーンズの大部分はCGの力によって表現されている。そんなCGチームの実力は認められ、アカデミー賞視覚効果賞を受賞した。実際の撮影は、ナイがグレーのジャンプスーツを着用して行われた。スニーカーを履き、顔にはトラッキングビーズ、帽子もかぶっていたという。一方で、ジョニー・デップやキーラ・ナイトレイたちは実際の衣装を着て撮影を行っており、現場では一人だけとても場違いな格好をしていたようだ。さらに、キャストの中でも自分の居場所を見つけるのに苦労したそうで、「みんな一緒にランチを食べてくれないんだ、悲しすぎるよ」とも語っている。ナイが言うように、ほとんどがCGで構成されていると役者として入り込むことも難しく、少しシュールな光景に屈辱さえ感じかねない状況だったに違いない。本作へのナイ自身の振り返りも含め、CGが演者にもたらす影響が今後の課題として挙げられている。(※2、※3)

 ジョーンズの話し方についても試行錯誤がなされ、結果的にスコティッシュアクセントで話すことになった。撮影中、自分でもやったことのない訛りが続けて出てくる奇跡のような瞬間もあったとのこと。まさに、デイヴィ・ジョーンズとして映画に舞い降りた瞬間だった。

 また、ジョーンズが操ることができるクラーケンという巨大なタコ、あるいはイカは、実際に近世のノルウェーに伝わっていた怪物がモデルとされている。ジョーンズが船長を務める「フライング・ダッチマン号」についても、幽霊船としての伝説がささやかれていた。そして、海の女神であるカリプソも実際にあった伝説の一つ。前作同様、この『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズは、世界中で言い伝えられていた海の伝説を一つにまとめたような物語となっているのだ。海に関わることのない、伝説も知らない現代の視聴者たちにとっても、いかに海が危険で神秘的なところなのか教えてくれる作品だ。

参考

※1. https://www.koimoi.com/box-office/when-pirates-of-the-caribbean-2-one-of-the-least-expensive-films-in-johnny-depp-led-franchise-emerged-as-the-the-highest-grossing-pirates-film-domestically-box-office-rewind/
※2. https://screenrant.com/pirates-caribbean-2-davy-jones-costume-silly-better/
※3. https://screenrant.com/pirates-carribean-bill-nighy-davy-jones-cgi-costume/

■放送情報
『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』
日本テレビ系にて、1月27日(金)21:00~23:29放送
※放送枠35分拡大
監督:ゴア・ヴァービンスキー
製作:ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮:マイク・ステンソン、チャド・オーマン、ブルース・ヘンドリクス、
エリック・マクレオド
脚本:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ
キャラクター原案:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ、スチュアート・ビーティー、ジェイ・ウォルパート 
撮影監督:ダリウス・ウォルスキー(A.S.C.)
プロダクション・デザイン:リック・ハインリクス
編集:クレイグ・ウッド、スティーヴン・リフキン(A.C.E.) 
衣装デザイン:ペニー・ローズ
視覚効果・特殊アニメーション:インダストリアル・ライト&マジック
音楽:ハンス・ジマー
音楽監修:ボブ・バダミ
出演:ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ステラン・スカルスゲールド、ビル・ナイ、ジャック・ダヴェンポート、ケヴィン・R・マクナリー、ジョナサン・プライス、ナオミ・ハリス、トム・ホランダー、リー・アレンバーグマッケンジー・クルック
©2006 DISNEY ENTERPRISES, INC.

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