夏帆、三浦透子らが抜群の存在感 『ブラッシュアップライフ』に漂う“『架空OL日記』感”

『ブラッシュアップライフ』に架空OL日記味

 バカリズムが脚本を手がける新ドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)は、“地元系タイムリープ・ヒューマン・コメディー”と銘打たれている。「タイムリープ」という大スペクタルを彷彿させるジャンルながら、繰り広げられるのは地元のごくごく日常的で限定的な風景で、人生2周目を余儀なくされる主人公・近藤麻美(安藤サクラ)を取り巻く淡々とした日々が描かれる。

 “生き直し”を命じられたことは一大事ながら、1周目の人生も2周目の人生も今のところそれ以外の大事件は起きず、日々をコツコツと生きる人たちの営みや悲喜こもごもが描かれる。バカリズムの脚本によるリアルすぎる愚痴を含む会話劇はもちろん、この劇的なことは何も起こらず繰り返される何気ない日常をそのまま見せてくれるキャスト陣の演技力によって本作は成立していると言えるだろう。たとえ何の代わり映えもしない日々でも振り返った時にはもう戻らぬ“その瞬間”を懐かしんだり感傷に浸ることはあるだろうが、まさに今“この時”を生きている当人たちがそこにエモさを感じることはまずない。本作は淡々とした毎日を淡々と描くことに終始し、“エモ加工”が立ち入る隙を許さない。だから心地良いし、信頼して観ていられるのだ。

 さて、このなんてことない地元での風景に溶け込みながら息をしているキャラクターの多くは、同じくバカリズム脚本作品『架空OL日記』(日本テレビ系)にも出演していたキャストたちである。

『架空OL日記』夏帆×臼田あさ美×佐藤玲×山田真歩インタビュー 【リアルサウンド映画部】

 まず、麻美の小・中学校からの同級生で、大人になった今でもしょっちゅう地元で遊ぶ親友の門倉夏希役を演じる夏帆。『架空OL日記』ではバカリズム演じる銀行員OL ・升野の同期・藤川真紀(マキちゃん)役を好演していた。出勤途中、駅で合流した升野と歩きながら話す内容はゆるっとしたたわいもないことながら、自身がこだわりたいポイントにはストイックさが見え隠れするキャラクターでジム通いに励んでいた。本作では、麻美と美穂(木南晴夏)の3人組の中ではどちらかと言うと適当な性格で周囲から程よく突っ込まれる側にいるのが夏希のように見える。カラオケの受付で身体を揺らしながら嬉しそうにするさまや、部屋に着くなり曲を入れようとする様子などからもマイペースさが伝わってくる。

 そして、同じく升野の同僚として、大人しいながらも独特なセンスを発揮する真壁香里(かおりん)役を演じた三浦透子は、本作では麻美が働く地元の市役所の後輩・河口美奈子役を好演しており、ここでも“我関せず”な様子で独自の世界観を放つ存在を担っている。お堅い職場で国保年金課にいながら、ポーカーフェイスな美奈子が着ているパーカーに書かれているロゴは“Go to hell(地獄に落ちろ)”。意図せずその場の空気を一瞬にしてかっさらっていき、予定調和を打ち壊してくれる“何かやらかしてくれそうな”抜群の存在感は、本作でも既に遺憾無く発揮されている。

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