『舞いあがれ!』永作博美が背負う決断の重み 2023年に通じるリーマンショック後の光景
一度は会社を売却すると決めためぐみ(永作博美)だったが、誇りを持って働く社員の姿を目にして考えを改める。
『舞いあがれ!』(NHK総合)第70話では決断の苦さが描かれた。IWAKURAを存続させると決めたことは、めぐみに難しいかじ取りを強いることになった。めぐみの手腕に社員は懐疑的で、得意先は取引を打ち切ると通告。融資元の信用金庫から給与削減と人員整理を要求されためぐみは、悩んだ末にリストラの対象者を絞り込む。
社員としては、経営基盤のしっかりした会社に身売りされればこれまで通り働き続けることができる期待があっただけに、突然の退職勧奨は災難以外のなにものでもない。ざわつく一同に笠巻(古舘寛治)は、リストラせずに無理したことで浩太(高橋克典)が命を縮めた可能性もあると指摘。「めぐみさんは覚悟を決めてここに立ってはる。俺らも覚悟を決める時とちゃうか」と話す。会社の難局は他人事ではなく、守られるだけの立場でいられないことを訴えた。
呼び出された対象者は決して納得したわけではない。仕事に愛着のある者ほど「なぜ自分が」と感じることもたしかだ。品質や稼働率を天秤にかける決め方への反発もあるだろう。それでも受け入れたのは、IWAKURAの窮状を知っていることと世話になったという思いがあるからだ。告げられた側はショックに違いないが、言い返したい思いを抑えて静かに去っていく背中に、ものづくりを支えた矜持を感じた。