『舞いあがれ!』視聴者も必見? リーマンショックを理解するアメリカ映画3選
連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)のヒロイン・舞(福原遥)の父・浩太(高橋克典)の会社IWAKURAは、リーマンショックの影響で経営難となってしまう。さらに必死に立て直そうとして無理をした浩太は、心筋梗塞で倒れ亡くなってしまった。浩太の突然の死は家族に悲しみをもたらすが、IWAKURAを守るために母・めぐみ(永作博美)を支えようとする舞は、パイロットになる夢を一旦横へ置き、IWAKURA立て直しのために奔走する。
『舞いあがれ!』あまりにつらい浩太の最期 朝ドラで描かれてきた「父の死」を振り返る
連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)の第14週となる「父の背中」が放送された。取引先からの本注文を待たずにネジを作り始め…
舞の「ハカタエアライン」への入社も1年延期になるという影響を及ぼしたリーマンショックは、2008年9月にアメリカの大手投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が経営破綻したことをきっかけに、世界的に発生した金融危機の総称。日本でも株価が大暴落し、『舞いあがれ!』で描かれているように、IWAKURAのような町工場も苦境に立たされることとなった。朝ドラでリーマンショックを正面から取り上げるのは、今回が初めてだが、リーマンショックをテーマにした作品は2008年以降いくつか作られてきた。その中から米映画3本をピックアップし、内容を解説しよう。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
アダム・マッケイ監督『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015年)は、クリスチャン・ベール、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピットなど、スター俳優が豪華共演し、第88回アカデミー賞で脚色賞を受賞。『マネー・ボール』の著者マイケル・ルイスによるノンフィクション『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』を原作にした映画だ。
2000年頃、アメリカでは住宅ローン債権の金融商品に沸いていた。その5年後、変わり者のトレーダー、マイケル(クリスチャン・ベール)が地道な調査の結果、格付けの高いはずの商品が少しずつ利回りを下げていることに気付き、サブプライムローン(ローンの信用度が低い低所得者層を対象とした住宅ローン)が債務不履行になるに違いないと予測。必ず市場崩壊が起こると信じたマイケルは、ウォールストリートの銀行家ジャレッド(ライアン・ゴズリング)や、引退した伝説の銀行家・ベン(ブラッド・ピット)らと共に、賢く先を読み、危機を切り抜けていく。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、リーマンショックで経済が世界的に大混乱状態になる中、4000億円もの利益を叩き出したマネートレーダーの実話を基にしている。『舞いあがれ!』では舞の兄・悠人(横山裕)が、まさにこのケースとして描かれた。多くの人がリーマンショックのような経済危機が起こるとは考えもせず、巻き込まれて生活が苦しくなっていた時に、危機を予測して回避し、むしろ利用して儲けを出していた人たちがいたのだ。この映画を観れば、悠人と全く同じというわけではないだろうが、悠人がどのように成功したのか理解するヒントになるだろう。
『キャピタリズム マネーは踊る』
『キャピタリズム マネーは踊る』(2009年)は、サブプライムローンについて詳しく知ることができる、マイケル・ムーア監督によるドキュメンタリー映画だ。サブプライムローンとは、2004年頃からアメリカで急速に普及した住宅ローンのことで、借入れ当初の数年間は金利が低めに設定されているため、低所得者でもローンを組みやすく、住宅を手に入れやすい。だがその後、金利が高くなり、ローンを返済できず家を失った人が続出した。
サブプライムローンを扱っていたリーマン・ブラザーズは、このサブプライムローンの債務不履行問題によって破綻したのだが、ムーア監督はリーマンショックによって家も仕事も失い路頭に迷った人々に寄り添い、不条理な資本主義(キャピタリズム)にメスを入れている。驚いたのは、サブプライムローンで暴利を得た巨大金融機関を救済するために国民の血税が大量に投入されたこと。このあまりにも皮肉な事態を追求するため、ムーア監督はウォール街へと取材に乗り込む。リーマンショックが庶民を窮地へと陥れた状況が分かりやすく描写されているので必見だ。