松本潤は“気弱なプリンス”としてどう成長? 『どうする家康』演出&制作統括が込めた思い

『どうする家康』演出&制作統括が込めた思い

 いよいよ2023年NHK大河ドラマ『どうする家康』がスタートする。主人公となる徳川家康は、本作を含めた大河ドラマ全62作のうち、25作品に登場。『黄金の日日』の児玉清、『春日局』の丹波哲郎、『独眼竜政宗』『葵 徳川三代』の津川雅彦、『おんな城主 直虎』の阿部サダヲ、『真田丸』の内野聖陽、『麒麟がくる』の風間俊介ら、挙げきれないほどに数々の名優たちがさまざまな家康を演じてきた。

 世代や観た作品にあわせて、それぞれの家康像があると思うが、一番イメージされる人物造形は晩年の“狸親父”だろうか。しかし、松本潤が演じる本作の家康はそんなイメージとはまったくかけ離れた“気弱なプリンス”像が脚本の根底にあるという。制作統括の磯智明は、その意図について次のように語る。

「“王道と覇道”という考え方が本作のベースにあります。『どうする家康』第1回でも、今川義元(野村萬斎)が元康(家康)に王道と覇道を説くシーンが描かれています。脚本の古沢(良太)さんは、家康が義元から多大な影響を受け、戦国という時代には珍しい思いやりと優しさを持った人物だったと捉えたそうです。ただ単に強い、力で制圧する人物では、家臣も付いてきませんし、国を統治するような仕組みは作れません。では、どんな人物が天下を統一し、約260年も続く江戸幕府を作り上げることができるのかと考えたときに、『気弱なプリンス』像が古沢さんの中で浮かんだそうです。後に『東照大権現』『神君』と神のように崇め奉られることになる家康と、若い頃の『気弱なプリンス』、まさにこのギャップにドラマとしての面白さを感じて物語を形作っていきました。そんな家康は、一人の強いリーダーではないかもしれませんが、今の時代が求める新たなヒーロー像、視聴者の方々に共感していただける人物になるのではないかと思っています」

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2023年1月8日より放送されるNHK大河ドラマ『どうする家康』の記者会見が12月12日にNHKにて開催され、主人公・松平元康/…

 演出の加藤拓は古沢が手がけた脚本について、「素晴らしい構成力と人間味にあふれた脚本」と称賛。

「各キャラクターの性格、つながりで物語が成り立っていて、史実に忠実でありながら、それを上回る新たな発見がある。演出をする上でも、各人物の魅力が粒立つように、視聴者のみなさんが愛してくださるように意識しています」

 同じく戦国時代を舞台にした『麒麟がくる』では、色鮮やかな着物が話題になった。『どうする家康』もまた、各キャラクターの衣装が非常に魅力的になっている。そこにも明確な意図があると演出の加藤は語る。

「戦国時代への一定以上の知識がある方は、町並みや風土でなんとなく誰の領地をいま描いているのか、どこの家臣団なのかなどが理解できると思うのですが、本作で初めて戦国時代に接するような方はぱっと見だとわからないと思うんです。なので、人物監修デザインの柘植伊佐夫さんと明確に各領地でカラーを作ろうというのは考えました。第1回で言えば、今川家の駿府と、元康の家臣団がいる三河では明確にトーンが違います。義元が高い知識と教養を備えた人物だったこともあり、当時の駿府は武家文化の最高峰。それに比べると三河は田舎っぽくみえてしまうのですが、ただ単に田舎臭いという場所ではなく、自然と共生する文化が芽生えている場所として描いています。三河家臣団の衣装は泥染めという自然素材をベースにした形にしています。三河の“自然と共生していく”という考えは、元康が後々江戸幕府を築いていく上でも彼の考え方のベースになっているのではないかと思っています」

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