今祥枝の「2022年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 アメリカのPeekTV時代の終焉

今祥枝の「2022年ベスト海外ドラマ」

 ここからは個人の感覚の問題だが、劇場で映画を鑑賞するという映画体験とは別にテレビっ子だった私は、本来スピンオフやフランチャイズが好きだった。ディック・ウルフでもデヴィッド・E・ケリーでも誰でもいいが、1つの世界を共有しながら複数のシリーズへと広がりを見せていく楽しみはアメリカのテレビの醍醐味でもあった。しかし、今はこのフランチャイズが厄介で苦痛ですらある。単体で楽しめない映画のように。それは年齢のせいなのでは? と言われたら、そうなのかもしれない。

 しかし、こうした感覚は私だけではないだろうと思うのは、映画もドラマもユニバース内の整合性、答え合わせなどが無用なシンプルな面白さに回帰していると思われる作品、ヒット作が増えていることにも表れているだろう。そうした理由もあって、以前にも増してローカル作品に面白さを感じている。ビジネス視点では日本と海外の共同制作作品も。今年もこれと思った作品にはきっちりコミットできたが、引き続き2023年もこの分野は仕事としてもしっかりと追っていきたいと思っている。

『ナルコの神』©CHO WONJIN Courtesy of Netflix © 2022

 というわけで、今年日本上陸した作品から選ぶリアルサウンド映画部海外ドラマベスト10は、ユニバースものではない作品から選んだ。10本からは外れたが、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』S4、5(Hulu)、『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』(U-NEXT)、『イーヴィル:超常現象捜査ファイル』S3(Hulu)、『コペンハーゲン:権力と栄光』(Netflix)、『絶叫パンクス レディパーツ!』(スターチャンネルEX)、『サムバディ・サムウェア』(U-NEXT)、『ナルコの神』(Netflix)あたりも語りたいことが多くあった。

 話題性から言えば『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』と『ベター・コール・ソウル』の年だったと思う。もちろん質も抜群に高い。各社が羨むディズニープラスのIPの有効活用=エコシステムからも『キャシアン・アンドー』のような作品が生まれるということは希望なのかもしれない。それでも、2010年代半ばから続いたアメリカのPeekTV時代は一つの終わりを見たような気がしている。

■配信情報
『Pachinko パチンコ』
Apple TV+にて配信中
出演:ユン・ヨジョン、イ・ミンホ、キム・ミンハ
監督:コゴナダ、ジャスティン・チョン
画像提供:Apple TV+

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