小池栄子「生涯忘れることのできない役に出会えた」 『鎌倉殿の13人』北条政子への感謝
小栗旬からの「最後まで一緒に地獄を見ましょう」
ーーもっとも変化した義時のそばにずっといたのも政子です。義時を演じた小栗さんを小池さんはどのように見ていましたか?
小池:義時が変わっていく様子、苦しんでいる様子は、自分のことのようにそばで見ていて苦しかったです。政子が頼朝と一緒になったことが大きなきっかけとなり、北条家は“狂っていく”わけですから。どこかで自分がその選択をしなければ良かったのではと、義時が変わっていけばいくほどに強く感じていました。大好きな弟をこんなふうにさせてしまったと。小栗さんは素直な方なので、辛いシーンのときは辛いって言うし、悔しいときは悔しい感情をそのまま出すし、本当に義時が憑依しているんじゃないかと思う佇まいで現場にいるときがありました。でも、私は「頑張って」としか言えなくて。それも姉・政子として情けないなとか、同じ役者として支えてあげることができていないなとか、ヤキモキした思いがありました。ただ、そんなときでも小栗さんが「最後まで一緒に地獄を見ましょう」と言ってくれて。それがすごいうれしかったんです。『鎌倉殿の13人』は家族の物語として始まったので、最後もそこに行き着くのかなと思っていたんですが、実際に御家人のみなさんがどんどん退場していって、気づいたら現場にも家族(北条家)しかいなくなっていて。終盤は家族だけで1日の撮影を終えるようなときもあって、またここに戻ってきたんだという幸せもありました。本当に小栗さんとは実際の家族のようになれた1年半だったなと感じています。
ーー名場面が多すぎるので、ひとつに選ぶのは難しいと思うのですが、小池さんの中で特に印象に残っているシーンを教えてください。
小池:第22回の落ち込んでいる義時に対して、政子が餅を持っていき、ふざけて首を締めているシーンです。こうしてお話ししていてもあのシーンに戻りたいと思うぐらい大好きなシーンで。あの頃の義時はすでにいろんな重荷を背負っていましたが、あの時の顔は初期の義時と変わらなくて、まだ子供の頃に戻れるんだという安心感があったんです。でも、第40回以降の義時では慰めに行っても絶対にあの笑顔は引き出せないんですよね。第22回の頃がもしかしたら昔の義時の面影があるギリギリのラインだったのかな。そんなことを考えながらふとしたときに思い返すことが多いシーンです。本当に挙げていけばきりがないですが、三谷さんの脚本の凄まじさを何度も感じる物語でした。
ーー最後の質問になります。小池さんにとって政子役、一言で表すならどんな役になりましたでしょうか?
小池:どうしよう。どんな役……。なんだろうな。もう本当にかけがえのない存在です。いつも役をいただいたときは、誰よりも私自身がその役の味方でいようと思うんです。そして、最期まで心中するぞという気持ち。政子はそんな思いを最期まで消化できた役でした。生涯忘れることのできない役に出会えたなと感じています。
■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK