ナースと医者、異なる視点で描く医療 『祈りのカルテ』『ザ・トラベルナース』から探る
回を追うごとに盛り上がりを増している10月期ドラマ。見渡せば、コロナ渦に減少傾向にあった医療ものが2022年の秋クールにして、ようやく戻りつつある。月9は吉沢亮を主役の新人医師に据え、15歳以下の子どもを対象とする小児医療にフォーカスした『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系/以下『PICU』)を放送。さらに土曜ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』(日本テレビ系/以下『祈りのカルテ』)では様々な科を回りながら勉強中の研修医を玉森裕太が演じている。テレビ朝日系の『ザ・トラベルナース』は、日本の医療にはまだ少ない“フリーランスのナース”ことトラベルナースに焦点を当て、岡田将生主演で放送中だ。お仕事ドラマというだけでなくヒューマンドラマとしての側面もあり、これまでに数々の人気作品が作られてきた。そんな医療ドラマについて、過去の作品も織り交ぜつつ各医療従事者の描かれ方を紐解いていきたい。
医療ドラマというと、医者が主人公である作品を思い浮かべることが多いだろう。幾度となく映像化された『白い巨塔』(新潮社)のように医者の世界に蔓延る知られざるカーストを描いたものもあれば、『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系/以下『ドクターX』)のように凄腕外科医の手腕に唸らされる作品まで。変わり種で言えば『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)のように、主人公が僧侶と医師を兼業する姿から、命と医療を描き出す作品もあった。医師といえど、救命救急、外科医、小児科医、産婦人科医と“科”が違えば治療内容も様々で、受診する患者の状況もまた変わってくる。視聴者は、こうした専門性の違いに興味をそそられることも多いものだ。
現在放送中のドラマでいえば、『PICU』は小児専門の小児集中治療室での出来事が作品の舞台となり、子どもの命、家族との繋がり、そして医師たちがどのように課題解決に向き合っているかを丁寧に描いている。吉沢演じる志子田は、まだ新人という役どころ。安田顕演じるPICU科長・植野の元で日々学び葛藤しながら小児医療と向き合う姿に見ごたえを感じる作品だ。
一方で、『祈りのカルテ』は病院に運ばれる患者の様々な事情を主人公・諏訪野(玉森裕太)がカルテから読み解く「謎解き要素」が見どころに。さらに研修医が行う臨床研修を逆手に、様々な科で起こる様々な事象にフォーカスできる強みもある。それぞれの科には個性豊かな先輩医師たちがおり、松雪泰子、斉藤由貴、小手伸也、片桐仁らの俳優陣がキャスティングされている。魅力たっぷりなベテラン医師と諏訪野の交流も見どころだ。