『チェンソーマン』アキと姫野のリアルで切ない距離感 ゲロチュー回が描く繊細な人間関係

 アキは姫野に感謝しているし、多分最初は好きだったかもしれない。一緒にいてもラクだし。そして彼なら、姫野が自分に特別な感情を抱いていることにだって気づいているだろう。そういう関係だったけど、結果的にアキはマキマのことが好きだ。しかもそれを平気で姫野に伝える。本人はわざとなのか、無自覚なのかわからない。「どうせ飲むならマキマさんと飲みたい」の一言を放ったとき、それを聞いた姫野の表情をあえて映さなかったのはよかった。飲み会の時も、マキマが来たら秒で席を用意するアキ。一方で姫野が彼に“はじめて”を教えたのは、タバコのことだけではないはず。割り切った関係ですよって顔をしながら、本命の話をされると普通に傷ついてしまうし、「あんなクソ女やめときゃいーのに」と愚痴る姫野は、いじらしくて寂しくてかわいい大人の女性だ。漫画・アニメの登場人物なのに、そこにはリアルな「女」が描かれている。藤本タツキの描く“女性”は、かわいくて綺麗だけではな、くグロテスクな部分もしっかりあるから美しい。

『チェンソーマン』第7話ノンクレジットエンディング / CHAINSAW MAN #7 Ending│ano 「ちゅ、多様性。」

 飲み会もリアルな雰囲気が印象的だった第7話。姫野のセリフが重なってしまい、字幕が出ないとなかなか気付けない情報になっていたが、コベニが9人姉妹であることが明かされた。ホテルで両親に風俗で働くかデビルハンターになれと迫られたこと、居酒屋で「こんなに美味しいものを食べたことがない」と感動していたことなど、コベニというキャラクターのアウトラインが徐々に捉えられるようになってくるのが面白い。デンジが思いのほか子供だったことを知って驚いた荒井も、ファーストキスがゲロキスでショックを受けるデンジを見て、それが実感できたのかもしれない。トイレで吐く彼の背中を笑いながらさすってあげるシーンには、温かいものを感じた。

 さて、デンジといえば初キスを大好きなマキマに見られただけでなく、なんと姫野にもお持ち帰りされてしまう始末。セカンドキス(お酒の味)も奪われた彼は、他のものも奪われてしまうのか!?

■放送・配信情報
『チェンソーマン』
テレビ東京ほかにて、毎週火曜24:00〜放送
Amazon Prime Videoにて、毎週火曜25:00〜最速配信
各プラットフォームにて、毎週水曜25:00〜見逃し配信
キャスト:戸谷菊之介(デンジ)、井澤詩織(ポチタ)、楠木ともり(マキマ)、坂田将吾(早川アキ)、ファイルーズあい(パワー)、伊瀬茉莉也(姫野)、高橋花林(東山コベニ)、八代拓(荒井ヒロカズ)、津田健次郎(岸辺)、内田真礼(天使の悪魔)、花江夏樹(サメの魔人)、内田夕夜(暴力の魔人)、後藤沙緒里(蜘蛛の悪魔)、大地葉(沢渡アカネ)、濱野大輝(サムライソード)
原作:藤本タツキ(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:中山竜
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:杉山和隆
アクションディレクター:吉原達矢
チーフ演出:中園真登
悪魔デザイン:押山清高
美術監督:竹田悠介
色彩設計:中野尚美
画面設計:宮原洋平
音楽:牛尾憲輔
オープニング・テーマ:米津玄師「KICK BACK」
挿入歌:マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
エンディング・テーマ:
ano「ちゅ、多様性。」
Eve「ファイトソング」
Aimer「Deep down」
Kanaria「大脳的なランデブー」
syudou「インザバックルーム」
女王蜂「バイオレンス」
ずっと真夜中でいいのに。「残機」
TK from 凛として時雨「first death」
TOOBOE「錠剤」
Vaundy「CHAINSAW BLOOD」
PEOPLE 1「DOGLAND」
マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
アニメーションプロデューサー:瀬下恵介
制作:MAPPA
©藤本タツキ/集英社・MAPPA
公式サイト:https://chainsawman.dog/
公式Twitter:@CHAINSAWMAN_PR

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