『君の花になる』本田翼に特別な想いを抱く高橋文哉 描かれたそれぞれの“逃げ場”
自分を守るためならば、逃げ出したっていい。そんなふうに言ってもらえる時代になった。けれど、誰だってできれば逃げたくなんかない。だから、逃げた後も大抵は自分自身を責めることになるし、たしかにあったはずのかけがえのない瞬間からも目をそらし続けることになる。でも本当にそんな逃げ方しかないのだろうか。
やむを得ずその場を立ち去ることしかできなかったかもしれないけれど、そこで共に過ごした時間を「いい思い出だ」と笑い合うことができたら……火曜ドラマ『君の花になる』(TBS系)第6話では奇跡がまたひとつ生まれた。
配信ランキングで1位を獲得することができた8LOOM(ブルーム)は、無事に事務所との契約更新も果たし、メディアからの取材が殺到する。世間に見つかった今が勝負時だと張り切る一同だったが、その状況を誰よりも望んでいた弾(高橋文哉)が気もそぞろ。あす花(本田翼)への想いが盛り上がり、気持ちを伝えたいという衝動に駆られるが、なかなかうまくいかない。
あくまで寮母としての立場で弾を応援しようとするあす花に対して、少々暴走気味になる弾。本来の彼らしからぬ様子を見かねたように、なる(宮世琉弥)からも「気持ちを伝えてどうしたい? どうしたいか考えた上で伝えないと、弾もあす花さんもみんな不幸になる気がするよ」と諭される始末だ。
そんなとき、最年長の有起哉(綱啓永)が「もう頼むから、もっと8LOOMのことだけで頭いっぱいにしてくれよ!」と叫んだ。その言葉が向けられたのは弾……ではなく、現役大学生の栄治(八村倫太郎)だった。大学の卒業を間近に控え、いよいよ8LOOMだけに専念するのかと思いきや、資格の勉強を始めた栄治。温度差を感じずにはいられない有起哉は苛立ちを隠すことができない。
何事にもまっすぐに突っ走る熱い男・有起哉。対して、栄治は時には少々ネガティブだと思われるほどの慎重派だ。相反する2人は、元メンバー・良介(池田匡志)に対することでも意見が対立してしまう。やめてしまったからといって仲間ではなくなったわけではないと主張する有起哉は、弾の母校でもある高校で行われるライブに良介を誘う。しかし栄治は、何も言わずに逃げ出すようにやめた良介に今会ってどうなるのか考えたのかと心配する。
きっとどちらも間違っていない。おそらく今の時代は栄治のように、そっとしておこうという人のほうが多いはず。逃げた場所にいる人から連絡がいけば、また追い詰めることになるのではないかと。そうした心遣いの距離に救われるケースがある一方で、有起哉のようにいつまでも仲間だと言ってくれる人もまたありがたいと思える場合も。
崖っぷちの8LOOMでは将来が見えないと、自らの意思で去っていった良介。だが、結果として今も8LOOM以上に打ち込めるものには出会えていないようだった。ブレイクを果たしたメンバーに複雑な気分になったけれど、それでも有起哉からの連絡を受けて、ケーキを持って寮を訪ね、自分の気持ちを一区切りつけるチャンスだと思えたようだった。
しかし、人間はそんなに器用に立ち回れるものではない。衝動的に嫌がらせのような行動を取ってしまった良介に、助け舟を出したのがあす花だった。あす花も、弾と良介がいた高校から逃げてきた過去を持つ人間だ。「立て直すなら早いほうがいい」と良介が“本当はどうしたいのか”を引き出していく。そして「決定的に倒れてダメになる前に私も誰かに助けてほしかったから」とまるで過去の自分を救おうとするかのように良介に寄り添う。