『舞いあがれ!』『カムカムエヴリバディ』『あさが来た』 朝ドラを“自転車”から考える

自転車から読み解く朝ドラ

 “朝ドラ”こと連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)の第5週「空を飛びたい!」では人力飛行機のサークル・なにわバードマンに入部した舞(福原遥)が、負傷した先輩パイロット・由良冬子(吉谷彩子)の代わりにパイロットになり、トレーニングに励む。

 中古のロードバイクを購入し(親友・久留美(山下美月)が値切ってくれたらしい)、乗り回し、食事制限をして、体重を減らし体力をあげる。由良が1年かけたことを舞はわずか2カ月でやらないとならない。サークルの仲間たち、家族の愛情を受けて黙々とロードバイクを走らせる舞。その様子がストイックでかっこいい。

 風を切りながら長いストロークを走る清々しい画をこの1週間、眺めていて、ふと、女性と自転車について考えた。正確にいえば、女性と朝ドラと自転車である。

 朝ドラには自転車が時々、印象的に登場する。以前、100作記念の特集番組で「朝ドラあるある」を紹介するなかに「ヒロインは自転車に乗りがち」があったほどだ。日常生活の描写にぴったりであること、ただ歩くより自転車に乗ったほうが絵になるという理由なのではないかと推測する。たいていは日常のスケッチなのだが、自転車を物語にみごとに組み込んだのが『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)である。安子(上白石萌音)が稔(松村北斗)に自転車の乗り方を教わっていた。なかなか乗れなかったけれど、稔が旅立つときに駅に見送りに行こうと必死になったことで乗れるようになった。そのおかげでその後、安子が自立して和菓子を売って歩くときにも自転車を使うことができる。自転車が安子の生活に役立ったのだ。さらにその後、安子の娘るい(深津絵里)が夫・錠一郎(オダギリジョー)の自転車練習につきあうことになり、因縁を感じさせる仕掛けになっていた。

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 『あさが来た』(2015年度後期)ではあさ(波瑠)が当時(明治時代)、まだ女性が自転車に乗ることが少なかった時代に早々と乗りこなした。ビジネスパートナー・五代友厚(ディーン・フジオカ)は外国で自転車に乗る女性を見ている。日本よりもはるかにいろいろなことが進歩している外国の文化を日本人も取り入れて進化していく象徴があさだったのだ。

 『カムカムエヴリバディ』、『あさが来た』と日常のスケッチを超えてさりげなく女性の自立の象徴になっている。そう思うと、『舞いあがれ!』の舞も、自転車よりも進化したマシーン飛行機に挑戦しているとはいえ、それを乗りこなすために、自転車で体を鍛えている。やっぱり、朝ドラと自転車は、主人公の、女性の成長に欠かせないアイテムである。

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