『PICU 』が示した目の前にある小さな命の尊さ 木村文乃が涙ながらに吐き出した本音

『PICU 』木村文乃が吐き出した本音

 “しこちゃん先生”こと志子田(吉沢亮)の指を一生懸命掴む小さい小さい手が守られ、赤ちゃんと母親双方を背中押しした『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)第4話。RSウィルスに感染し重症化した生後1週間の赤ちゃんが”PICU”に運び込まれるも、その傍らに両親の姿はなく、まだその子を呼ぶ名前さえもない。生まれて間もなく乳児院に預けられたこの子は出生届も出される前で、母親側に養育の意思はないようだ(母親側の事情ばかりがフィーチャーされたが、この子の父親は一体どこで何をしているのだという思いはずっと拭い去れなかった)。

 志子田は何とか治療に耐え頑張る赤ちゃんにひと目会いに来てほしい、「この子の頑張ってる姿見たらきっとお母さんも変わると思うんです」という思いで母親に電話をし、本人とも接触を試みるも、科長の植野(安田顕)はその姿を不安視し「いろんなお母さんがいますからね、いろんな子どもがいるように」と釘を刺していた。

 望まぬ妊娠出産、自分の体調も身体も変わっていく中、音信不通になった相手男性、両親には子どもを育てることを頭ごなしに反対され、励ましてほしい人は側にいない。全てが初めてのことだらけの中、生後間もなく生死を彷徨う我が子の現実に、医師から「会いにきてほしい」という要望の電話、その一方で、我が子に“もう会わない”と約束させる両親、産後の心身の不調だってあるだろう。その全てが止められぬスピードで進行し、彼女一人に覆いかぶさり追い込まれていく。自分の本音と向き合う間もなく、どうしたらいいのかわからず今にも押しつぶされてしまいそうな若き母親の姿を誰が“無責任”なんて一言で片付けられるだろうか。そもそも初めてのことなのに、産めば自動的に母性が湧いてきて気がつけば母親になれている、なんてことは当然ないのだ。

 そして、救命医の綿貫(木村文乃)が抱えていた事情も明らかになる。彼女は母親になりたかったもののなれなかった過去を持っていたのだ。3年間の不妊治療を経て娘を妊娠するも妊娠中に異変を覚え受診した病院で適切な処置が受けられず、その後大量出血し娘の死亡が確認されたのだ。この件で綿貫は子宮をなくし、もう二度と母親になれることはないのだという。どのタイミングまで娘が生きていたのかもわからず、死ぬときに一人じゃなかったのか、死ぬ前に一度でも外の空気を吸ったのか、最愛の娘の最期が知りたいと訴える彼女の姿に身が引き裂かれる思いがした。

 望んでいない妊娠出産で意図せず母親になってしまった大学生と、望んで望んで不妊治療の末にようやく子を宿し母親になった綿貫。境遇も立場も違えども「お腹に子どもができれば誰でも母親になれる。でも誰でもなれるわけじゃないから」という綿貫の言葉は彼女ら双方に言えることで、互いの正反対とも言える違いを凌駕し、大学生の母を優しく包み込んでいくところは非常に頼もしく心強かった。

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