『ブラックアダム』北米V2達成もヒーロー映画のジンクス破れず ホラー映画が大盛況

『ブラックアダム』北米V2もジンクス破れず

 スーパーヒーロー×ドウェイン・ジョンソンの“スーパーコンボ”に死角なし。10月28日~30日の北米週末興行収入ランキングは、DC映画『ブラックアダム』が2週連続のNo.1。3日間で2770万ドルを稼ぎ出し、北米累計興収は1億1113万ドルとなった。

 主人公のブラックアダムは、本国でもコミックファン以外には決して知名度の高くないキャラクター。その単独映画を早くも1億ドル以上のヒットに至らしめたのは、やはりドウェインのスター性だろう。10日間の成績は『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)をわずかに上回っているから、ドウェインとDCのタッグは『ワイスピ』シリーズ以上の注目度だったことになる。

 ところが、ジョンソンさえもスーパーヒーロー映画のジンクスからは逃れられなかった。前週比の下落率は-58.7%と、同じくジョンソン主演『ランペイジ 巨獣大乱闘』(2018年)の-43.8%、『スカイスクレイパー』(2018年)の-54.4%などと比較してもやや大きい。もっとも、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』は2週目の下落率が-57.9%だった。興行規模も含めて考えれば、こちらと比較するのが正当だろうか。

 大きい懸念があるとすれば、本作には1億9500万ドル(※宣伝費を除く)が投じられており、黒字化はまだまだ遠いこと。このままの推移では、財政難が指摘されるワーナー・ブラザース・ディスカバリーが続編の製作を認めるのはハードルが高いだろう。下落率はドウェイン映画よりもスーパーヒーロー映画のそれに近く、『アクアマン』(2018年)ほどのロングランも見込みづらいのが現状である。

 日本公開は12月2日ともう少し先だが、すでに『ブラックアダム』は世界市場に広く展開されており、海外興収は1億3900万ドル。全世界累計興収は2億5013万ドルだ。

 ところで今週のポイントは、ハロウィン効果が絶大だったのだろう、ホラー映画が強烈な存在感を放っていること。トップ10のうち、実に4本がホラー映画なのである。

Prey for the Devil (2022 Movie) Official Trailer

 第3位に初登場したのは、ライオンズゲート配給『Prey for the Devil(原題)』。2980館で702万ドルと、事前に予想された通りの成績でスタートを切った。本作は“悪魔祓い映画”の異色作で、世界的に悪魔の憑依事件が相次ぐなか、史上初の女性エクソシストを目指しているシスターのアンが、エリートばかりの悪魔祓い学校に入学。教授とともに憑依事件に挑むが、ある少女に取り憑いていたのは、かつてアンの母親に取り憑いた悪魔で……。

 「エクソシスト版『ハリー・ポッター』」とも呼びたくなる本作を手がけたのは、『ラスト・エクソシズム』(2010年)、『13の選択』(2014年)のダニエル・スタム監督。出演は注目株ジャクリーン・バイヤーズ、『バイオハザード』(2002年)のコリン・サーモンほか。Rotten Tomatoesでは批評家スコア19%と渋い数字だが、観客スコアは69%とまずまずだ。

 第4位には、変わらず大ヒット中の『Smile(原題)』がランクイン。公開5週目で北米累計興収9238万ドルと、いよいよ1億ドル突破が見えてきた。世界興収は1億8598万ドルと上々、製作費はわずか1700万ドルだからまさに大成功だ。

 第5位『Halloween Ends(原題)』は、邦題『ハロウィン THE END』として2023年4月に日本公開も決定。ただし北米では同時配信されていることもあり、3日間で383万ドル、3週目ながら北米興収6032万ドルと伸び悩んでいる。世界興収は9466万ドル。

 そして第8位は、先週もご紹介した『Terrifier 2(原題)』。スプラッター映画『テリファー』(2016年)の続編で、グロテスクすぎて途中退出者が続出していると話題を呼んだ。インディペンデント映画ながら、公開4週目で795館を追加する拡大公開となっており、わずか25万ドルの製作費で北米興収763万ドルを記録している。

 ホラー映画のかたわら、映画祭・映画賞の注目作も少しずつ順位を伸ばしつつある。第7位『Till(原題)』は、先週の第13位から大幅にランクアップ。公開3週目にして、なんと1954館を追加するという超拡大公開に踏み切った。3日間の興行収入は前週比+673%の281万ドル、北米興収は363万ドルとなっている。

 本作は批評家・観客からとにかく高評価を受けており、Rotten Tomatoesでは批評家スコア98%・観客スコア96%という絶賛ぶり。観客の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A+」評価を獲得したが、2022年公開作で「A+」評価になったのは『トップガン マーヴェリック』と今週第9位の『The Woman King(原題)』、そして本作の3本のみだ。

 『Till』は、白人女性に口笛を吹いたと因縁をつけられ、激しいリンチを受けて死亡した14歳の黒人少年エメット・ティルと、その母親メイミー・ティルをめぐる史実の映画化。出演は『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール:報復の荒野』(2021年)のダニエル・デッドワイラー、製作を兼任したウーピー・ゴールドバーグ、『Swallow/スワロウ』(2019年)のヘイリー・ベネットら。監督・脚本は気鋭チノナイ・チュクーが務めた。

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