『サイバーパンク:エッジランナーズ』が切り開いた新たなアニメ表現

アニメ『サイバーパンク』が切り開いた表現

 このレベッカのキャラクターデザインは、当初CD Projekt REDから難色を示されたというが、それも納得だ。何せゲーム版のどこにも、そんな可愛らしいギャップのある女の子が登場する余地はないし、下手をすれば世界観が崩壊しかねない。しかし、TRIGGER側がレベッカのキャラクターデザインを起用した理由もわかる。このようなキャラクターがいないと、シリアス一辺倒になってしまったり、アニメだからこその面白さというのは、生まれづらい。

 これはどちらが正しいという話ではなく、制作スタイルの違いだろう。これはある種の賭けということになるだろうが、配信後のキャラクター人気を見ると、TRIGGERはこの賭けに勝った。レベッカは主人公のデイビットや、ヒロインのルーシーと並ぶ『サイバーパンク:エッジランナーズ』の人気キャラクターとなり、マスコット的な存在としてファンに愛されている。

 この全く異なる方向性を志向する2社が合同で制作したという部分にこそ、本作の面白さが宿っているのではないだろうか。また、個別の話数で見ると特に高い評価を受けている第6話に注目したい。

 物語の大きな転換点でもある第6話は、過激なゴア表現が続く。ただしその荒々しさの中には、単なる過激な快感性のみならず、どこか乾いた、諦念のような哀しさが内包されている。第6話のラストで少し荒れたようなタッチで描かれるデイビットには、この生活の厳しさと虚しさも内包したような複雑な感情が込められている。第6話は2022年のアニメシーンの1つとしても屈指であることは間違いなく、絵コンテや作画監督を担当した五十嵐海の名前とともに、後々にも語られるのではないだろうか。

 TIRGGERはゴア表現や、セクシーな表現にも果敢に挑戦するスタジオだ。それはもしかしたら、一部の視聴者は眉をひそめるかもしれないが、それが特別な味でもある。『サイバーパンク:エッジランナーズ』は、日本アニメの新たな魅力を世界に提供し、その幅を広げた大きな価値と成功を獲得した作品として、2022年のアニメの中でも特別な存在感を発揮していくだろう。

参照

・https://automaton-media.com/articles/interviewsjp/20220914-219010/

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『サイバーパンク:エッジランナーズ』
Netflixにて独占配信中
監督:今石洋之
副監督:大塚雅彦
キャラクターデザイン:吉成曜、金子雄人
クリエイティブディレクター:若林広海
シリーズ構成:宇佐義大
原案:CD PROJEKT RED
脚本:宇佐義大、大塚雅彦
劇伴制作:山岡晃
アニメーション制作:TRIGGER

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