史劇版SKYキャッスル『シュルプ』に釘付け キム・ヘス&キム・ヘスクら若手俳優も好演

『シュルプ』王位継承争いと母と子の成長

 かつてこんなにも王宮を走り回っていた王妃はいただろうか。未来の朝鮮王を育てあげるべく、熾烈な王位継承争いに奮闘する王妃の物語である『シュルプ』がNetflixで配信中だ。

 王妃のイム・ファリョン(キム・ヘス)には5人の息子がいる。優秀な長男(ぺ・イニョク)は世子の座に就いたが、トラブルメーカーで自由な王子4人には振り回される日々を送っていた。息子が寝ている布団を剥ぎ取って叩き起こす、常に早歩きで座る暇もないほど出歩く行為は気品の高い王妃の印象とは程遠いが、“問題を起こす息子たちに手を焼く母親”と見ればファリョンに親近感を覚えるだろう。いつの時代も変わらない“親心”は、痛いほどに刺さり共感できる部分だ。また、現代の要素を組み込んだ演出はコミカルな軽快さを生み、史劇特有の重厚感を保ちつつ絶妙なバランスを取っている。「史劇版SKYキャッスル」とも言われた本作は、ソウル大学に入学させるよりも難しい1つしかない王の座を狙う宮中の母親たちの戦いだ。500年前、王室のロイヤルファミリーが指導を受けた勉強法や脳の活性化法などの英才教育もまた興味深い。

 題名の『シュルプ』とは「傘」という意味。ドラマのポスターやストーリーには、自分は雨に濡れ幼い我が子に傘をさし、子を守りたくて雨の中で懇願するファリョンがいた。雨から子を守り、雨に打たれながら膝まずく母親の姿は、『シュルプ』という名の深い愛情を表しているようである。

 本作が単なる王位継承争いで終わらないのは、王イ・ホ(チェ・ウォニョン)の母親であり、影の権力者である大妃(キム・ヘスク)の存在だ。彼女も息子を王にするために手段を選ばず登り詰めてきた母親であり、王宮を自分の手に治めようと目論む。しかもファリョンを気に入らない上に、王の名を汚すのならば孫であっても容赦はしない。王位継承争いはライバルだけでなく、王妃vs大妃の戦いも大きな見どころである。

 画に映るだけでも圧倒されるキム・ヘスとキム・ヘスク。朝鮮王朝を舞台に王妃と大妃として2人が対峙する本作は、視聴者から放送を待ち望む声がうかがえた。国民の母とも呼ばれているキム・ヘスクは数々の作品で優しい母親も意地の悪い母親も演じてきた。近年では、『調査官ク・ギョンイ』(2021年)での悪役、『明日』(2022年)ではあの世の神などの幅広い役柄を務め、どんな役も信頼のおける大ベテラン俳優である。対するキム・ヘスも決して期待を裏切らない俳優であり、『未成年裁判』(2022年)の判事役でみせた圧巻の演技を記憶している人も多いはずだ。さらに王子役には新人俳優らが揃い、未知なる魅力を発見していくのも楽しめるポイントだろう。

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