惜しくもトップ10入りを逃した『スペンサー』 劇場で観られることを感謝すべき理由

『スペンサー』の劇場公開を感謝すべき理由

国内映画興行ランキング

 先週末の動員ランキングは『ONE PIECE FILM RED』が、土日2日間で動員16万8000人、興収2億3300万円をあげて11週連続1位となった。10月16日までの72日間の累計動員は1231万9559人、累計興収は171億91万2060円。さすがに息切れ感もあるが、なにしろ他に強い作品がない。先週末からは第6弾となる入場者プレゼント(ビジュアルカードセット)を配布。今後も2週おきに第7弾、第8弾の配布が予定されていて、12月3日公開の『THE FIRST SLAM DUNK』まで強い自社配給作品の公開がないこともあり、「いけるところまでいこう」という東映のやる気を感じさせる。

 というわけで、秋に入ってから当コラムは深刻なネタ枯れである。そもそも、シネコンで新作枯れが続いているのだから、当然といえば当然の話ではあるのだが。初登場作品として最上位となった先週末2位の『カラダ探し』も、既に2週前のコラムで先取りして取り上げ済み。オープニング3日間の累計動員は16万5976人、累計興収は2億893万950円ということで、単独主演作として前作にあたる『バイオレンスアクション』が大コケしてしまった橋本環奈としては、今後も主演女優としてのポジションをなんとかキープできそうな結果に一安心といったところか。

 公開規模が大きい作品ではないので一概には言えないが、国内興行における外国映画を取り巻く状況の厳しさを感じずにはいられないのが、先週末公開されてトップ10入りを逃して11位に初登場した『スペンサー ダイアナの決意』だ。監督はチリ人のパブロ・ラライン、イギリスとドイツの合作ということで、ハリウッド的なわかりやすい伝記映画とは趣を異にする作品ではあるが、日本でも大きな話題となったエリザベス女王の国葬から間もない公開ということで、興行的にはそれが追い風になると思っていたのだが。本作で今年のアカデミー主演女優賞にノミネートされたクリステン・スチュワート演じるダイアナは一見の価値あり、作風としても劇場でスクリーンに集中しての鑑賞を強く推奨する作品なので、気になっている方は是非劇場に足を運んでほしい。

 それにしても、もう7ヶ月も前に授賞式を終えた今年のアカデミー賞の主演女優賞でノミネート対象となった5作品のうち、日本で劇場公開されたのは、『スペンサー ダイアナの決意』が最初の作品であることにお気づきだろうか?

 ジェシカ・チャステインが主演女優賞を獲得した『タミー・フェイの瞳』は日本では劇場公開が見送られてディズニープラスで配信。オリヴィア・コールマンがノミネートされた『ロスト・ドーター』はNetflixで全世界配信。ニコール・キッドマンがノミネートされた『愛すべき夫婦の秘密』はAmazonプライム・ビデオで全世界配信。ペネロペ・クルスがノミネートされたスペイン・フランス合作の『パラレル・マザーズ』は日本公開を11月3日に控えてはいるものの、ノミネート作がこれだけ軒並み劇場では見られない、もしくは日本公開が遅ければ、国内興行で外国映画が盛り上がらないのも無理はない。特にアメリカ製作の作品は軒並み配信スルーとなってしまっているわけで、こればかりは日本の配給会社や宣伝会社も手の打ちようがない状況だ。

■公開情報
『スペンサー ダイアナの決意』
全国公開中
監督:パプロ・ラライン
出演:クリステン・スチュワート、ジャック・ファーシング、ティモシー・スポール、サリー・ホーキンス、ショーン・ハリス
配給:STAR CHANNEL MOVIES
Photo credit:Pablo Larrain

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