京本大我の芝居の真髄は千変万化の声色 『束の間の一花』では儚さを伴った演技に期待

 SixTONESの京本大我が主演を務めるドラマ『束の間の一花』(日本テレビ)が10月17日よりスタートする。本作は、京本演じる余命宣告を受けた哲学講師・萬木昭史と、2年前に余命宣告を受けた女子大生の千田原一花(藤原さくら)の“束の間”の恋模様を描いた物語。京本は、2016年に放送された『鼠、江戸を疾る2』(NHK総合)以来6年ぶりのドラマ作品となるため、放送前からファンを中心に注目を集めている。

 実際、10月8日に放送された「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」(ニッポン放送)では、ドラマ撮影の用語がわからなかったり、現場に慣れておらず困惑することが多いと京本は笑いを交えながら話していた。特に、ヒロイン役を務める藤原さくらと向かい合うシーンにおいて、藤原が“よい演技”をしたのにも関わらず、京本がマスクを外し忘れたがゆえにNGになってしまったとのエピソードは、彼が慣れない現場で奮闘している姿を想像させた。

 そんなエピソードがありつつも、演技の経験そのものはかなり豊富だということを忘れてはいけない。なぜならば、京本は2015年に帝国劇場にて上演された『エリザベート』への出演を皮切りに、幾多ものステージで腕を磨き続けてきたからだ。しかも京本が出演してきた舞台作品は、ジャニーズ事務所が主催するものに限ったことではない。先述した『エリザベート』や、ディズニー・ミュージカルが基となったミュージカル『ニュージーズ』などでは、事務所の垣根を超え舞台で活躍する大御所たちと共演。彼の魅力の1つであるハイトーンボイスを生かした歌唱力は健在のまま、声のバリエーションを広げ、豊かな表情でさまざまな役をこなしながらファンの心を射抜いてきた。

 そんな数々の出演作の中でも、筆者には忘れられない京本大我出演作品がある。2018年に上演された『BOSS CAT〜シャルル・ペロー「長靴をはいた猫」より〜』だ。有名な童話『長靴をはいた猫』を元にした本作で初の主演を務めた京本の役どころは、頭がキレる猫。どこか聡明な声色で、舞台の真ん中に1人で立ちニャーニャーと話す京本。そこから一変し、体感3分強の長ゼリフを不自然な息継ぎなしに、余計な感情を入れずに話す姿は圧巻で、物語の中へじわじわと引き込まれていった。東京・大阪合わせて7日間しか上演されなかった同作。悲しいことに年々記憶は断片的になってしまってはいるが、あの時、たった5人の出演者の中で主演として振る舞う京本の堂々たる姿だけは今でも鮮明に覚えている。

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