『一橋桐子の犯罪日記』はタイトルとは正反対のドラマ? 松坂慶子がはまり役の予感

『一橋桐子』はタイトルとは正反対のドラマ?

 そんな彼女に手を差し伸べるのが、彼女がパートを勤めるパチンコ店の上司・久遠(岩田剛典)。ぶっきらぼうで私生活が謎に満ちている彼には、刑務所に服役していたという噂も。「できるだけ人に迷惑をかけずに捕まる道」を模索する桐子のアドバイザー的な存在となっていく。映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』での癒し系男子や、『死刑にいたる病』での表情が隠れ異様なオーラをまとう謎の男、Netflix『金魚妻』での人妻との恋に落ちていく色気ある大人の男性など、一つひとつの役を演じる度にイメージを更新してきた岩田。ただあえて共通する点を挙げれば、その作品を最後まで観ないと彼が演じる役はどんな人物か断定できないところにあるのではないだろうか。今回演じる久遠もまたワイルドで悪い男に見えるのだが、桐子の味方になってくれそうな予感がする。年の離れたバディぶりにも注目したいところだ。

 また、16歳とは思えない大人びた雰囲気とオーラをまとった長澤樹演じる女子高生の雪菜にも注目だ。彼女はひょんなことから桐子と知り合い、世代を超えた友人となる。桐子の憧れの人として、物語にほんのりと恋愛要素をプラスしてくれる三笠役に草刈正雄。その三笠が率いる句会のメンバーに片桐はいりと木村多江がいるのだが、癖の強いキャラを演じてきた二人だけに何か一波乱起こしてくれることを期待してしまう。他にも宇崎竜童、富田望生、竹原芳子など、目が離せない個性派の俳優陣も勢揃い。桐子本人は必死なのだけれど、そうした面々の存在も相まってどこか新喜劇を観ているかのような可笑しみもある。

 また何といっても、脚本を担当するのは『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(NHK総合)や『きょうの猫村さん』(テレビ東京系)を手がけてきたふじきみつ彦。彼の作品はままならない人生を切なくも温かい視点で包み込んでくれる。本作も自分の老後に不安を抱きつつも、幸せに生き抜くという願いを決して放棄しない桐子の姿に元気をもらえるドラマだ。タイトルからは想像もできないような、穏やかな時間が流れる『一橋桐子の犯罪日記』を、桐子の親友である知子が好きないちご大福でも食べながら気楽な気持ちで見守っていきたい。

■放送情報
土曜ドラマ『一橋桐子の犯罪日記』
NHK総合にて、10月8日(土)スタート 毎週土曜22:00~22:49放送(全5話)
出演:松坂慶子、岩田剛典、長澤樹、片桐はいり、宇崎竜童、木村多江、由紀さおり、草刈正雄ほか
原作:原田ひ香『一橋桐子(76)の犯罪日記』
脚本:ふじきみつ彦
音楽:長谷川智樹
制作統括:高橋練(NHKエンタープライズ)、清水拓哉(NHK)
プロデューサー:宇佐川隆史(NHKエンタープライズ)
演出:笠浦友愛、黛りんたろう、加地源一郎
写真提供=NHK

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