奈緒の演技になぜ虜になってしまうのか? 持ち前の愛くるしさと、垣間見える“底力”の凄み

奈緒の愛くるしさと演技の凄みを紐解く

 一方で、奈緒はその愛らしさを“狂気”にも変えることができる。『あなたの番です』(日本テレビ系)で演じた“尾野ちゃん”こと、尾野幹葉はまさにその人懐っこい笑顔でじわじわと隣の家庭を侵食するキャラクターだった。既婚者相手にストーカーまがいの行為を繰り返し、たとえ拒否されようとも笑顔を崩さない姿勢はサイコパスそのもの。

奈緒、『あなたの番です』尾野ちゃん役で反響 若手女優は“サイコキャラ”で存在感を強める?

放送を重ねるごとに盛り上がりを見せる『あなたの番です』(日本テレビ系)で、その“怪演”が話題を呼んでいる女優の奈緒。昨年の朝ドラ…

 奈緒は、時として「可愛い!」と思って近づいた犬に噛みつかれた時のような衝撃を味わわせる。『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)でのミステリアスな天才ハッカー役や、映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』での危険な魅力を孕んだ愛人役など、そのギャップを生かした役柄も多い。

 だが、奈緒は癖のあるキャラクターの設定や台詞に頼り切ることなく、演じる役柄の心情を画面を通してじっくりと伝えられる役者でもある。特に印象に残っているのが、『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系)で演じたイズミ役だ。

 イズミは幼い頃に病気で亡くなった母親の代わりに、視覚障害者である主人公のユキコ(杉咲花)を支える優しいお姉ちゃん。一方でユキコを心配するあまり彼女の自立を当初は阻害してしまうこともあり、一歩間違えれば、“毒親”ならぬ“毒姉”になりかねない危うさも秘めていた。

『恋です!』が描くのは恋愛模様だけじゃない 杉咲花×奈緒による姉妹の“家族”の形

大切だからこそ、ついついお節介を焼いてしまう。傷ついてほしくないから、先回りをして安全な道に誘導する。でも、そんな愛情は相手の成…

 それでもイズミというキャラクターが視聴者から愛されたのは、彼女の責任感や周囲の人間に対する溢れんばかりの愛情を奈緒が映し出していたからだろう。初めて一人で服を買いに行くユキコの後ろ姿を見守っている時、一目惚れした獅子王(鈴木伸之)から思い人が男性であることを打ち明けられ、「推しの幸せは、夢ですから」と“ファン”として側にいることを誓った時。イズミの優しい微笑みにほんのりと浮かび上がる寂しさに心打たれた。まっすぐだったり歪んでいたり、形はそれぞれ違うけれど、その人なりに切実な愛情を奈緒は私たちに届けてくれる。

『ファーストペンギン!』奈緒

 『ファーストペンギン!』で演じる和佳は生活が苦しい中、ひとりで息子を育て上げた逞しい女性だ。奈緒が母親役を演じるのはこれが2度目。映画『マイ・ダディ』では、とある秘密を抱え、葛藤しながらも夫と娘を愛し抜く姿が多くの人の胸を揺さぶった。とびきりキュートな外見からは想像もつかないほどの底力をいつも見せてくれる奈緒。そんな彼女が疲れた心と身体にぐんぐん栄養を与えてくれそうな物語が始まる。

参照

※. https://realsound.jp/movie/2022/10/post-1142586.html

■放送情報
『ファーストペンギン!』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:奈緒、堤真一、石塚陸翔、鈴木伸之、渡辺大知、梅沢富美男、吹越満、梶原善、上村侑、志田未来、松本若菜、ファーストサマーウイカ
脚本:森下佳子
演出:内田秀実、小川通仁ほか
企画プロデューサー:武澤忠
プロデューサー:森雅弘、森有紗
チーフプロデューサー:三上絵里子
主題歌:緑黄色社会「ミチヲユケ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/first-penguin/
公式Twitter:@ntv_penguin
公式Instagram:@ntv_penguin

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる