『翔んで埼玉』二階堂ふみの性別を越えた再現度 リアルとファンタジーを同居させる説得力

『翔んで埼玉』二階堂ふみの再現度が高い

 あの壮大な“ディス”り芸炸裂エンターテインメントが『土曜プレミアム』(フジテレビ系)に帰ってくる。続編の公開も控えている映画『翔んで埼玉』だ。

 魔夜峰央の同名漫画を実写化した本作では、GACKTと共に主演を務めた二階堂ふみが原作通り、初の男性役を演じたことでも話題になった。金髪ボブ、王子様コスチュームに身を包み真っ白なロングブーツがトレードマーク。東京屈指の名門校・白鵬堂学院の生徒会長を務め、東京都知事の息子であるサラブレッド・壇ノ浦百美を見事演じ上げ、異質で非現実な原作の独特な世界観を立ち上がらせた。あの妖しい雰囲気を全身に纏い、性別なんて超えた紛れもない壇ノ浦百美がそこにいる。

 最初は選民意識の塊で鼻持ちならなかった百美が、貴公子のようなアメリカ帰りの転校生・麻実麗(GACKT)と出会いキスされたことをきっかけに一気に形勢逆転し、恋に生きる乙女モードに切り替わるのも面白く、百美の身を粉にしての“命がけ”の大恋愛、その中で徐々に埼玉アレルギーを克服し、最終的には尊敬している父親に対峙し疑惑を追及していくまでになる成長物語も頼もしく、見どころの一つとなっている。振り切れた演技と浮世離れした出で立ちながら、そこにはきちんと恋に苦悩したり自身の限界を突破していく百美の悩みや葛藤が滲み、一生懸命なその姿は何だか憎めず時にクスッと笑えるがいじらしくもある。チャーミングな百美をいつの間にかつい応援したくなっている。

 これだけのコメディを実写化で見せられるのも、やはり二階堂ふみだからこそのことだろう。「貫禄」と「無邪気さ」、「現実味」と「ファンタジー」という一見したところ相反する要素を違和感なく同居させられるのが彼女の魅力のひとつだ。朝ドラ『エール』(NHK総合)でのヒロイン・音役では抜群の歌唱力と時にコミカルなお芝居を披露していたのも記憶に新しいが、『プロミス・シンデレラ』(TBS系)では家なし、無一文になったアラサー女性が性悪男子高校生と“リアル人生ゲーム”に巻き込まれ恋に落ちていくというこれまた突拍子もない設定のラブコメで主演を務め、小気味良さを炸裂させた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる