『六本木クラス』は竹内涼真の現在地を伝える一作 配信映えする存在感で脱“国民の彼氏”へ

竹内涼真、配信映えする存在感で新境地へ

 ここまでくれば、竹内が韓国発の大ヒット作のリメイクである『六本木クラス』で主演に起用されたわけは理解できるだろう。復讐劇とサクセスストーリーに恋愛要素を加えたドラマを忠実に再現する上で、中心になる役者には物語の芯にあるメッセージを自分の血肉として生きること、物語を背負う覚悟が求められる。復讐は強い情念をともない、それゆえに深く凄惨なものである。15年以上のスパンで成熟を体現しながら、夜も眠れないほどの感情を心の底に持ち続ける宮部新をリアリティのある人物として形にするには、ありあまる熱量と役に身を投じる覚悟をもってして初めて可能になる。それゆえにさまざまな壁を超えて視聴者の胸を打つのだ。

 スケールの大きさと配信映えする個性を持ち合わせる竹内だが、近年は繊細な感情表現にも磨きがかかっている。『竹内涼真の撮休』(WOWOW)で、廣木隆一や内田英治、松本花奈ら各監督と気鋭の脚本家のオーダーに応えて本人役を演じる竹内は、それまで見せなかったくだけた表情や柔らかさ、こだわりの強さを自然体で演じ分けている。第1話でスパイスカレーを作る描写は、きっと普段から本人もこんな感じなのだろうと思わせるが、観ているうちに素であるはずの竹内と演じている竹内が同一人物か自信がなくなってくる。自然体を自然に演じられる役者は演技上手で、そうであるなら「素」を自然に演じてしまう竹内は直感的にそのツボをつかんでいるといえる。

 『六本木クラス』で竹内演じる新が魅力的に感じられるのは、先を見通して虎視眈々と戦略を練る野心家の側面と、誰にでも分け隔てなく接し、信念をもって生きる強さはもちろんだが、時折見せる涙もろさや虚しい表情、悲しみが共感を誘うためだ。復讐はある意味で他者依存的な行動であり、怒りの奥に弱さが隠れている。演技を通じて竹内が差し出す弱さが、新という人間の持つ悲しみを真実だと感じさせる。映画『アキラとあきら』で演じた山崎瑛も、タフネスの中に悲しみを秘めたキャラクターだった。竹内涼真が私たちを惹きつけてやまないのは、そこに人間そのものを見出すからだろう。

■放送情報
『六本木クラス』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00〜21:54放送
主演:竹内涼真、新木優子、平手友梨奈、早乙女太一、鈴鹿央士、香川照之、稲森いずみ、緒形直人、光石研、中尾明慶、矢本悠馬、さとうほなみ、近藤公園、田中道子
原作:チョ・グァンジン『六本木クラス~信念を貫いた一発逆転物語~』(ウェブ漫画/電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」掲載中)、チョ・グァンジン/キム・ソンユン『梨泰院クラス』(テレビシリーズ/JTBC)
脚本:徳尾浩司
演出:田村直己、樹下直美ほか
音楽:高見優
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/roppongi_class/
公式Twitter:https://twitter.com/roppongi_class
公式Instagram:https://www.instagram.com/roppongi_class/

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