『初恋の悪魔』林遣都が味わう喪失感の物語に差した光 坂元裕二らしい切なさに満ちた脚本

『初恋の悪魔』林遣都の喪失感に差した光

 その直前の好きなものを羅列していく鹿浜と摘木の姿も然り、釈放されたリサ(満島ひかり)に摘木が会いにいくシーンで即座に“別人”であることを見抜くリサと、その後の喫茶店でのやりとりも然り。名言めいたひとつひとつの台詞の言葉選びよりもシチュエーションとしての奥行きの豊かさがこの最終話後半にはあふれていた印象だ。とりわけ馬淵から渡された新住所の紙を捨ててしまった鹿浜が、部屋の真ん中でゴミ袋をひっくり返して転がっていくリンゴを持ち上げた時の情感は卓越しており、改めてこのドラマ全体が鹿浜という人物のための物語なのだと気付かされる。

 ラストシーンでいつもの4人で自宅捜査会議を開き、模型の前でマーヤーのヴェールを剥ぎ取ろうとする。かなり多方面へと枝葉を広げていった終盤の展開から、警察署で日の当たらない者たちのユニークな推理刑事ドラマという序盤のスタイルへと回帰させる。それでもこの邸宅の地下には不気味な座敷牢のような部屋があるし、鹿浜という奇人は真っ当な刑事に復帰しているし、隣人もシリアルキラーではなかったし、彼らは友人であるという大きな違いがある。とても綺麗な物語の収め方であった。

■配信情報
『初恋の悪魔』
Huluにて配信中
出演:林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑、佐久間由衣、味方良介、安田顕、田中裕子、伊藤英明、毎熊克哉、
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生ほか
プロデューサー:次屋尚ほか
チーフプロデューサー:三上絵里子
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hatsukoinoakuma/
公式Twitter:@hatsukoinoakuma
公式Instagram:@hatsukoinoakuma_ntv

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