上白石萌歌は愛されキャラ! 『ちむどんどん』で歌子を演じた必然性
物語の大きな飛躍の連続を経て、気がつけばクライマックスへと突入する『ちむどんどん』(NHK総合)。第24週は、ヒロイン・暢子(黒島結菜)の妹を演じる上白石萌歌がフィーチャーされた週だった。特に第118話から第119話にかけては、彼女の演じる歌子こそヒロインだといってもよいものだっただろう。朝っぱらから「ちむどんどん」させられたものである。
本作といえば、視聴者からの厳しい声が上がっているのが話題だ。それは物語に対してであり、登場人物に対してであり、場合によっては演じる俳優にまで及んでいる。「それでは俳優が気の毒だ」と思う反面、そこまで言わせている俳優は、役を完全に自分のモノにしているのだと筆者は思ったりする。世間的にはどうなのだろうか。
ともあれ、フィクションはフィクションだ。それぞれのキャラクターはあらかじめ文字によって綴られた脚本から生まれたもので、あくまでも俳優の身体を借りるかたちで、まるで本当に存在しているかのようにお茶の間に登場している。筆者は、ヒロイン・暢子の肝の据わった図太さも、“ニーニー”こと賢秀(竜星涼)の真っ直ぐ過ぎる純粋さも好きなのだが、それについて書くのはここでは控えておく。ともかく『ちむどんどん』の人々は、何かと問題を指摘されがちである。
そんな中でも上白石が演じる歌子は、かなりの“愛されキャラ”だ(「唯一」だと思っている方もいるかもしれない!)。彼女はしっかりと「自分」を持っているものの、体が弱いことや心根の優しさが影響して、誰もが前に出たがる『ちむどんどん』メンバーのうち、もっとも“控えめ”な印象があった。他のキャラクターと比べて相対的に彼女が好かれたわけではないだろう。やはり純粋に歌子が、そして、上白石萌歌という俳優が演じる歌子が、良かったのである。歌子の内向的な弱さも、自信のなさも、優しさも、上白石の大きな瞳の揺れや声色のグラデーションがじつに豊かに物語ってきた。前田公輝が演じる“さとるニーニー”との恋の行方がフォーカスされてからは、決して歌子が受け身な女の子などではなく、「自分」という主体性を持った一人の女性なのだと、そのまなざしの強さや芯の通った声で表現していた。ただの“愛されキャラ”ではなく、彼女自身が誰かを“愛するキャラ”になったのだ。上白石にとってこれが初の朝ドラ出演だが、さすがは経験値の高さを感じさせる。
上白石といえば、まだ22歳ながら俳優としてのキャリアはすでに10年以上。高校を卒業してからのここ数年、一気に目にする機会が増えた。それは単純に俳優業に割ける時間が増えたということでもあるのだろうが、やはり実力を買われてのことだろう。