『石子と羽男』が説く、弱者が声を上げる勇気と希望 有村架純と中村倫也が乗り越えた試練

『石子と羽男』が説く、弱者が声を上げる勇気

 どのように傷ついているのか、どのくらい壊れやすいのか。私たちは相手の心の中を見ることができない。だから、精いっぱい気持ちを推し量って、寄り添ってできることを模索する。仕事であっても、個人的な付き合いであっても。そうして心を支え合って生きていくスタンスもあれば、投資家・御子神(田中哲司)のように「ビジネスに感情は1%もいらない」「怒り、動揺、不安、全部邪魔! 判断を見誤せるもの、それが感情!」と割り切っている人もいる。

石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー

 きっと御子神の言うことも一理あるのだろう。どこかで割り切らなければ、羽男の父・泰助(イッセー尾形)が言うように「つけこんでくるやつ」がいる世界だ。そんな世界をサバイブしていくには、大庭は優しすぎるのかもしれない。だが、そんな大庭だからこそ石子と羽男は懸命に助けようとも奔走した。

 もし御子神がびしょ濡れになりそうなときにも、こんなふうに誰かが傘を差し出すことはあるのだろうかとも思う。もしかしたら「その傘だって金で買える」と言われるかもしれないが、それが自分を心から救いたいと差し出された傘と、どちらが心強いと感じるのかも考えたいところだ。

 放火殺人という重い罪を前に、なんとか大庭と拓の容疑を晴らすことができた石子と羽男。釈放された大庭と石子のハグの間に、全力で羽男が入っていくシーンは第9話のハイライトと言ってもいいだろう。このシーンは、石子と大庭の「会えない時間に好きだと気づけて逆に良かった」ではなく、“石子と羽男”のタッグが依頼人・大庭の無実を獲得できたことが最高に嬉しい場面なのだから。

石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー

 しかし、まだ真犯人が捕まっていない。泰助が強引に推し進めている羽男の転職も、不動産仲介詐欺の真相も、何も解決していない。それどころか御子神のもとに、なぜか綿郎(さだまさし)がいるというラストシーンに、胸がザワザワするばかり。そしてこのドラマが、あと1話で終わってしまうという事実……。できることなら、石子と羽男の微笑ましいやり取りをずっと見ていたい。だが、それも見納めが近づいている。間違いなく「石子と羽男ロス」になるであろう最終話。傘を差し合うように、ドラマについて大いに語らいたいものである。

■放送情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし
脚本:西田征史
演出:塚原あゆ子、山本剛義
プロデュース:新井順子
編成:中西真央、松岡洋太
音楽:得田真裕
主題歌:「人間ごっこ」RADWIMPS(Muzinto Records / EMI)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
公式Twitter:@ishihane_tbs
公式Instagram:@ishiko.to.haneo_tbs

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