『異世界おじさん』胸を鷲掴みするエルフの作画 再放送ではキャラの表情に要注目

 制作スタッフの新型コロナウイルス感染により、第8話以降の放送が一時休止となることが公式サイトで発表された『異世界おじさん』。第3話から第6話までが再放送されることを受け、改めて本作の魅力を振り返っていきたい。

 本作は17歳の時にトラックにはねられ、目を覚ます17年間異世界で生活していたおじさんが、“浦島太郎”状態になりながら現代社会で生活する物語だ。

 おじさんは異世界で培った能力を発揮するシーンは度々見られるが、オークションで出品されている商品を送料無料で購入するために高速移動を使用したりなど、いたって地味。ジャンルとしては、タイトルのとおり“異世界転生モノ”に分類される作品であると思うが、基本的には甥のたかふみとおじさんが2人で暮らす集合住宅内で話が進み、派手な山場を迎える展開もない。

 それでも、楽しく視聴できるのは声優陣の演技力は当然として、各登場人物の表情が豊かだからではないか。本作の個人的に印象深かった登場人物の表情に触れたい。

 とにもかくにも、第1話でおじさんが巨大オークに襲われている姉弟を救ったにもかかわらず、おじさん自身が彼女らに怪物だと勘違いされたシーンは衝撃的だった。ここではおじさんや姉弟にセリフはなく、得られる情報は映像のみ。ただ、むしろセリフがないことによって、純粋に登場人物の表情に注目できてより印象に残った。化け物に姉を奪われないように勇気を振り絞る弟、弟を守るために死んだ目で笑顔を浮かべながらおじさんの手を取ろうとする姉。姉弟の感情がありありとわかるアニメーションになっており、表情や間だけで繊細かつ変化のある感情を読み取らせる表現力には驚いた。

TVアニメ『異世界おじさん』ノンクレジットED 井口裕香「一番星ソノリティ」

 そして、女性キャラクターの表情は、本作の作画の中でも特に輝いている。第1話でエルフが大怪我を負ったおじさんを治療するシーンで、「勘違いしないで、これは貸しよ」「生涯をかけて地べたを這って償うと良いわ」というツンデレファンが興奮するセリフを吐く。すると、おじさんは「生涯?」と聞き返すと、自身の発言を振り返り恥ずかしいことを言っていたことに気付いた時の表情がたまらない。視線の細かな移動も可愛らしく、すぐには気付かずに少々間を置いた後にハッとするのもリアリティがある。また、お礼としておじさんから指輪を渡されそうになる時、一度は拒否する態度を見せて目を吊り上げたものの、上目遣いの表情にヌルっと変わり「(指輪は)いる」と口にする慎ましさも最高。

 エルフはその表情でもって毎話胸を鷲掴みしてくるが、第6話でおじさんから添い寝する許可をもらった時の満面の笑みも印象深い。細かな機微を魅せた表情ではなく、恐らく初めて見せたであろう100%の喜びに満ちた笑顔はむしろ新鮮。これまでに見せたものとは違う表情であり、エルフの魅力を新たに知れた気分だった。

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