『異世界おじさん』“セガ”世代ほどたまらない! 原作の面白さを引き上げた声優陣と音楽

 異世界に転生した主人公が、中世ヨーロッパ文化レベルの舞台で現代知識を使いながら無双する“異世界転生もの”のライトノベルが多く刊行され、またそれらを原作としたテレビアニメが続々と放送される中、異世界ネタをメタ視点でパロディにしたアニメ『異世界おじさん』が放送中だ。KADOKAWAのWEBコミックで連載中の同名漫画が原作で、セガのゲームの大ファンであるおじさんが連発する1990年代ネタの数々が日本のみならず海外でも好評を博して注目を集めている。

 主人公のおじさんは17歳の時にトラックにはねられて昏睡状態に陥り、それから17年後の2017年に目を覚ます。が、眠っていた期間のおじさんの精神は「グランバハマル」という異世界へ飛んでおり、魔法が存在するファンタジー世界で様々な体験を積んでいた。とりあえず自分の住む団地におじさんを連れ帰りルームシェアすることにした甥のたかふみは、魔法が使えるおじさんをYouTuberとしてデビューさせる……というのが大筋だ。おじさんは交通事故に遭った17歳の時点で世間の娯楽への知識が止まっているため、目覚めた17年後の世界でさまざまなカルチャーギャップに直面するのが面白さの核になっている。

 本作と切っても切り離せないのがゲーム会社のセガである。おじさんの深いセガ愛に打たれた株式会社セガは自社のゲーム『メガドライブミニ』や、『ゲームギアミクロ』、『チェインクロニクル3』などのリリースに合わせて本作とのコラボ企画を立て、2022年のアニメ化にあたっては伏せ字、ピー音なしで固有名詞をそのまま発して良いとのお墨付きを出している(原作ではメーカー名や商品名は伏せ字で書かれている)。さらにアニメの制作スタッフも原作のセガ愛を存分に盛り込もうと奮闘努力しており、オープニングのタイトルバックは『心霊呪殺師 太郎丸』、『デジタルダンスリミックス』を始めとした1990年代のセガのゲームパロディで構成されている。そもそも細かい破片が集まって『異世界おじさん』のメインタイトルが現われる部分からして、セガサターンの起動画面と同じデザインというほど凝っているのだ。

『異世界おじさん』 ノンクレジットOP

 さて、アニメ化で原作の面白さを何倍にも引き上げる鍵は、声優の芝居と音楽であるが、なんといってもおじさんを演じる子安武人がはまり役だ。子安は『アルスラーン戦記』のギスカールや、『蒼天の拳 REGENESIS』の流飛燕など、したたかな悪役からクールな正義漢まで幅広い演技で活躍しているが、主人公の味方にせよ正体不明のピエロにせよ、二枚目キャラの声という印象が強い。それがセガのゲームソフトを手に満面の笑顔を浮かべたり、YouTubeチャンネルの批判コメントにいちいち反論を書き込む、変顔の大人げないおじさんを演じるのだから、面白くないわけがない。たかふみの幼なじみ・藤宮役の小松未可子、おじさんにツンデレで接するエルフ役の戸松遥と、女性声優もギャグのメーターを振り切る、はじけた演技が心地良い。

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