宇野維正の興行ランキング一刀両断!
興収100億円超えが2作品 2022年の夏休み興行「勝ち組」と「負け組」
はっきり言うなら、「負け組」は上記5作品以外すべてのメジャー作品ということになるが、特に不調が目立ったのがシリーズものではない日本映画の実写作品だ。7月22日に公開された『ゴーストブック おばけずかん』は31日間の累計興収が4億1382万7100円、8月11日に公開された『TANG タング』は11日間の累計興収が5億964万3080円、先週末公開されたばかりの『バイオレンスアクション』はそんな絶不調『TANG タング』の2週目以下の9位に初登場と、目も当てられない状況だ。シリーズものではない日本映画の実写作品で唯一10億円を超えているのは7月29日に公開された『今夜、世界からこの恋が消えても』(24日間の累計興収10億6976万7950円)だが、他が酷すぎるだけで夏休み映画としては物足りない成績であることに変わりはない。
ところで、今挙げた『TANG タング』と『今夜、世界からこの恋が消えても』、そして今週末に公開される『アキラとあきら』、それぞれSF、恋愛、池井戸潤原作のヒューマンドラマとまったくジャンルは異なるが、その3作品すべてが三木孝浩監督作品であることにお気づきだろうか? 三木孝浩は日本のメジャー映画界で活躍する監督の中では確かに際立って演出力も高いし、様々なジャンルの作品で重用されるのはその器用さが買われているのだろうが、それにしても1ヶ月足らずの間にメジャー作品が3本公開されるというのは異常だ。インディーズまで見渡せば、日本には他にも優れた映画監督はたくさんいる。日本映画の実写作品の不調の原因は状況的なものだけではなく、これまで長年にわたって新しい人材の発掘、育成をしてこなかった日本のメジャー映画会社の怠慢でもあるのではないか。さらに言うなら、一部の優れた映画監督は、そんな日本のメジャー映画界をとっくに見限っているのかもしれない。
■公開情報
『トップガン マーヴェリック』
全国公開中
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:クリストファー・マッカリーほか
製作:ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソン
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ヴァル・キルマーほか
配給:東和ピクチャーズ
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