『カーター』新たなアクション映画の境地 チョン・ビョンギル監督が見せる狂気の熱量
とはいえ、はっきり言って本作には粗がある。カットの繋ぎのCGが安っぽかったり「それもうカット割ってることにならないか?」なシーンがあったり、かなり強引に“全編疑似ワンカット”を成立させている。あと、スパイ映画とゾンビ映画をかけ合わせたストーリーはかなり変だ。正直、完全な調和のとれた映画とは言い難い。それでも本作を凄いと思えるのは、思わず目をつぶってしまいたくなるほどの狂気と熱量があるからだ。これはなにも感覚的な話ではなく、そもそもこんな映画を撮るような監督にそのくらいの狂った熱量がないとおかしいだろう。チョン・ビョンギル監督には誰もやったことのないことをやってやろうという意気がある。そんな作り手たちの熱意が泣けるから、本作は最高なのだ。ゾンビ要素には大分頭を悩ませたが「スパイ映画とゾンビ映画をかけ合わせたらスーパークールになる」。きっとチョン・ビョンギル監督はそう思ったに違いない。実際にそうなったかは大分怪しいし、正直ゾンビ要素はノイズでしかないが、この監督の「やりたい」「やる」「やってやる」「やった」という熱量にあらゆる粗を許してしまうのだ。
本作はかなり視覚的な映画であり、どんなに言葉を並べようとも実際に観てもらわない限りなにもわからない。奇天烈なカメラワークも度肝を抜くアクションも、実際に見てもらわなければわからない。というわけで是非、Netflixで『カーター』を再生してみてほしい。そうしたら、「こんな映画観たことない!」と思える。
■配信情報
『カーター』
Netflixにて配信中