岩松了、“重鎮顔”でドラマ&映画に引っ張りだこ 劇作家・演出家として培った俯瞰力

岩松了、ドラマ&映画に重宝される“重鎮顔”

 ニンマリ笑うしたり顔がよく似合う。その笑顔が時として怪しくも、チャーミングにも見える。何だか哀愁があり、そしてその中に滑稽さや情けなさも滲んで憎めない。そんな名バイプレイヤーが岩松了だ。

 公式サイト上のプロフィールには「俳優」の前に「劇作家・演出家」という肩書きが並んでいる。『蒲団と達磨』で岸田國士戯曲賞(1989年)、『こわれゆく男』『鳩を飼う姉妹』で紀伊國屋演劇賞(1993年)、『テレビ・デイズ』で読売文学賞(1998年)と受賞が続く。映画『東京日和』では日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞しており、テレビドラマや映画の脚本家・監督としても活躍している。なるほど、岩松の全体と見事に調和する余白は、物語の設計図を俯瞰して見ることができるからこそのものなのだろう。

 『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)第5話にも、自宅の防犯リフォーム依頼をする70歳の一人暮らしの老人・鎌田武彦役で登場。実はその自宅を娘が売却しようとしていることが後々わかり、鎌田の真意の読めなさとこっそり明かされた秘密がストーリーを味わい深く牽引していた。

 これは『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)での主人公・とわ子(松たか子)の父親で、元参議院議員の大豆田旺介役とも通ずるところがあるかもしれない。悪気なく何でも明け透けに話し、遠慮がないながらも、ありのままを受け入れてくれる大らかさと安心感がある。ただ、そんなひょうひょうとした旺介がとわ子の母で自身の元妻・つき子のある秘密については最後まで明言を避け、“彼から見た真実”を守り抜いていたのが印象的だった。

 自由奔放で放任主義に見えて、娘のことをとても大事に想う愛情深さが覗き、とわ子に自転車の乗り方を教えてあげられなかった後悔を口にするシーンはかなり見応えがあった。最初は上手く話をはぐらかしながらも、それでも言葉にして紡ぎ出す後悔や謝罪がリアルで胸に迫る。

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