『石子と羽男』は“見えないもの”にこそ注目 異なるタイプの優しさとそれぞれの想いが錯綜
考えが見えない羽男と、告白の告白までする大庭
これまで「声を上げてください」と説き続けてきた石子だが、自分自身がピンチに見舞われたときには声の上げられない側だということが今回わかった。顔を歪め、擦らずにはいられないほどの腹痛があっても、仕事をきっちりとこなそうと頑張ってしまう。そんな石子の体調不良にいち早く気づきいた羽男は「事務所で書類整理でもしてろ」と、頑なに調査の同行を拒否。対象的に、石子に想いを寄せる大庭(赤楚衛二)は甲斐甲斐しくおんぶをして運び、カイロを購入してくる。ちなみに貼るのと持つのと。どちらを石子が求めても大丈夫なように、両方揃える念の入れようだ。
もちろん羽男の“見えない優しさ”より、大庭の“見える優しさ”のほうが、わかりやすくて温かい。しかし、どちらがより石子のことをわかっているかといえば、まっすぐに「休め」といっても聞き入れないだろうと考えて、一見冷たく突き放した羽男のような気もするのだ。そして羽男も声を上げられない側の人間である。これまで想定外の場面で手が震えてフリーズしてしまったときも、石子だけが気づいていたように。2人は同じタイプの優しさを持ち合わせているからこそ、重野の心情も察することができたのかもしれない。
回を重ねるたびに、お互いに抱えているものを受け入れ合い、関係性を築いてきた石子と羽男。いつしかお互いを「相棒」と躊躇なく言えるようになったのも、ある意味の両想いだ。とはいえ、その関係性がラブに直結するのかはわからない。特に羽男の何を考えているかわからない具合は、姉の優乃(MEGUMI)のお墨付きだ。ただ、場合によっては相棒というポジションのほうが、恋人よりもずっと特別になることもある。わかってくれているという信頼感は、わかりやすい“見える優しさ”よりも難しかったりするからだ。
かたや、石子へのラブありきで同じ職場にやってきた大庭が狙うのは、やはり恋人ポジション一択。転職活動がうまくいったら「告白します」と、もはや気持ちを告げているのと同じ“告白の告白”までする大庭。その想いは、石子にもわかりすぎるほど届いている。これまでも大庭の“見える優しさ”に、何度もドキッとはしている様子の石子。さらに、宣言通り就職先の内定をもぎ取った大庭に「俺と付き合ってください」と、どストレートな告白をぶつけられてきっと胸が高鳴ったのではないだろうか。
「どっち? どっち? どっち? どっち? ねっ ちょうだい!」と思わず、鼻を触りながらせっつく羽男の声が脳内再生される。石子の答えはYESなのかNOなのか。そもそも石子にとって、恋愛が人生を楽しむ要素となっているのかも私たちは知らない。次回は第6話と、まだまだ折返し。石子と羽男、なかなか声を上げられない2人が事件を解決しながら、どれだけ本音を見せてくれるのか。このドラマは“見えないもの”にこそ注目だ。
■放送情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし
脚本:西田征史
演出:塚原あゆ子、山本剛義
プロデュース:新井順子
編成:中西真央、松岡洋太
音楽:得田真裕
主題歌:「人間ごっこ」RADWIMPS(Muzinto Records / EMI)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
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