吉田羊主演『コールドケース』いぶし銀の魅力が滲み出る ドキュメンタリーのような緊張感

『コールドケース』いぶし銀の魅力が滲み出る

 描かれている物語はあくまでフィクションだが、背後の固有名詞が実在のものなので、まるでそういう事件が本当にあったのではないかという錯覚してしまいそうな説得力もあり、ドキュメンタリーを観ているような緊張感が画面を支配している。

 そして、それは石川たち刑事の描写にも現れている。事件を捜査し解決する立場にある刑事たちは現代のヒーローだが、石川たちは淡々と捜査し、事件を解決に導いていく。アクションもミステリードラマ的な謎解きも派手さは薄く、とても抑制された描き方となっている。本作が描こうとしているのは刑事の活躍ではなく、未解決事件に巻き込まれた被害者とその関係者、そして容疑者の物語であり、彼らの過去と現在の落差をみせることで浮かび上がる人間ドラマこそが、本作の肝だ。

『連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~』(c) WOWOW/Warner Bros. Intl TV Production

 石川たち刑事は、事件の真相へと視聴者を導くためのナビゲーターだ。しかし、だからといって、刑事たちに魅力がないかと言うとそんなことはない。むしろ徹底的に捜査する場面以外のシーンが抑制されているからこそ出てくる、いぶし銀の魅力が滲み出ている。

 吉田羊、滝藤賢一、光石研、三浦友和たちが演じる刑事の芝居は、暗く重厚なものとなっており、感情をあらわにする場面は、あまり多くない。唯一、永山絢斗が演じる高木だけはチーム最年少の新人であるため、喜怒哀楽がはっきりしているのだが、だからと言って、彼が正しいという描き方にはなっていないのが、既存の刑事ドラマと大きく違うところだ。

『連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~』(c) WOWOW/Warner Bros. Intl TV Production

 扱う事件同様、刑事たちの描写も体温が低く、いい意味で「cold」なものとなっている。とはいえ、石川たちのプライベートが全く描かれないわけではなく、時々、ぼそっと呟くように挟み込まれる。そこから浮かび上がる人間くささがとても魅力的で、秘められているからこそ、逆に気になってしまう。これもまた、本作の隠れた魅力である。

 実際の社会問題や背景が題材となっているため、絶望的で救いのない物語もあるが、事件と向き合う石川たちの姿からは“救いのようなもの”を感じる。重厚な刑事ドラマを求めている方にオススメの作品である。

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『連続ドラマW コールドケース ~真実の扉~』
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