『鎌倉殿の13人』新納慎也演じる全成が最期まで貫いた愛 忘れられない宮澤エマの涙も

『鎌倉殿の13人』全成が貫いた愛

 実衣を演じる宮澤の演技にも心打たれる。疎遠になっていた姉・政子からの「大丈夫。あなたは私が守ります」という言葉に、張り詰めていた空気が和らぐ瞬間は愛おしかった。全成と再会したときには、涙で目を潤ませながら彼を強く抱きしめる。全成の優しい言葉に応え、実衣は無邪気な笑顔を見せる。

 しかし、実衣は流罪となった全成と再会することは叶わなかった。義時から全成の死罪を聞かされた実衣は「あの人はどんなふうに亡くなったんですか」と義時を問い詰める。義時から話を聞き終えると、実衣はほっとしたような笑顔を見せた。政子が「やはり全成殿には人知を超えたお力があったんですね」と言うと、実衣は「当たり前でしょう」と誇らしそうに返す。だが、愛する人を失った彼女の深い悲しみは隠せない。

 涙ながらに「私には分かってた」と誇らしげな笑顔を見せた直後、「ずっと前から」と口にした実衣は遠い思い出を振り返るように寂しそうな目をしていた。実衣が悲しみに暮れながらも笑顔を見せ、気丈に振る舞い続けたのは、愛する人の「誰も恨んではいけないよ」という言葉を大切にしていたからではないだろうか。2人の絆の深さが改めて感じられると同時に、涙と笑顔の奥で、実衣の心が深く傷ついたことも窺え、心苦しい。

 全成と実衣は権力のそばにいながら、権力を持たずに生きてきた。頼朝の死をきっかけに力を持つことに揺れた2人だが、全成は僧の立場を崩さず、そして何より実衣を一心に愛し続けた。実衣も、少し疎遠になることはあったものの、出会った頃と変わらず全成を慕い続けた。コミカルなやりとりを繰り広げる2人は、血なまぐさい物語の中で一息つける存在だった。そんな2人のやりとりはもう見ることができない。

 実衣の涙は、義時に比企と対決するしかないという覚悟を決めさせる決め手となった。だが比企との全面対決を前に、頼家が病に倒れる。比企との争いのみならず、鎌倉の行く末にも暗雲が立ち込める。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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