すでに話題沸騰『石子と羽男』の“ちょい弱”な中村倫也もいい! セリフ多めでツヤ声も堪能

『石子と羽男』中村倫也の“ちょい弱”な魅力

 演技力の高さについてはすでに語られつくされているのかもしれないが、これまでに膨大な数の役を演じてきているのに、それでも見ると毎回「Yes! やっぱハズレナシ!」とガッツポーズが出てしまう。そんな底知れない演技力を持つ俳優、それが中村倫也だ。

 そんな彼の「新たな魅力が炸裂している!」と、第1話の放送直後から話題沸騰なのが、中村倫也と有村架純がW主演を務める『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系/以下『石子と羽男』)だ。

 このドラマは、パラリーガルの石田硝子(有村架純)と弁護士の羽根岡佳男(中村倫也)が図らずもバディとなり、自分の身や家族、友人など、誰にでも起こりそうな身近なトラブルに協力して挑んでいく物語。

石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー

 主演ふたりに加え、ミュージシャンのさだまさし、お笑い芸人のおいでやす小田がレギュラー出演し、毎回ゲストが登場するという贅沢なつくり。またプロデューサーが、TBSの『アンナチュラル』、『MIU404』、『最愛』と、視聴者の記憶に焼き付く良質なドラマを何本も手掛けている新井順子なので、スタート前から期待値はマックスのドラマファンも多かった。

 と、話題になる要素がてんこもりなドラマなのだが、ここでは中村倫也の魅力についてフォーカスしたい。

 まず今回の羽根岡というキャラクターは、最近彼が演じた役の中では比較的珍しい、ヘタレな部分を持つキャラだ。彼が演じる役柄に“温・中村”と“冷・中村”があるとしたら、“温・中村”の方だ(もちろん温冷だけではなく、ぬるま湯、水に近い冷たさ、熱湯など様々な役柄を演じているのは承知の上だ)。2021年に放送された『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)の青山一役も、2020年に放送された『この恋あたためますか』(TBS系)での社長・浅羽拓実役も、どちらかといえば“冷・中村”だし、クールでカッコイイ比率の多い役だった。同じく2020年に放送された『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)の明智五郎役も、ドラマ全体のトーンはコメディでも、本人はあくまで自分の審美眼に疑いを持たない美青年であり美食家、という役柄だった。

 だから、『石子と羽男』の冒頭のシーンで、彼がイタリア語で「Sono contento(ソノ コンテント)」とつぶやいた時は、「お、またカッコイイ役柄かな」と一瞬思ったが、そうではなかった。

 羽根岡は“フォトグラフィックメモリー”という、見たものをそのまま一瞬で記憶できるという能力を持ち、その能力を駆使して弁護士試験に合格はしているが、現場経験や実地経験が薄いため現実面での対応力がなく、自分のプランの想定外の事態に遭遇すると心も体もフリーズ。手が震えてきてしまう、という弱点を持っていた。

 その弱点を見抜かれないように、また初対面の人間になめられないようにするために、そして依頼が殺到するよう羽根岡が考えた方策が、“天才弁護士”というキャラを作り上げてカマすこと。「Sono contento(ソノ コンテント)」は、そのためのブランディングの方策のひとつだったのだ。

 羽根岡は決してクール、冷徹、冷静ではなく、弱さも持った、その分親しみやすさもあるキャラクターだった。そのことが新鮮だし、ここまで表情を大きく変化させる中村倫也を久しぶりに見られることが嬉しいし楽しい。

 第1話で“天才弁護士”を気取るためのアイデアメモを石子に発見された時の、「ハズイ……!」という表情がおかしいし、いかにそのブランディングが陳腐かをまくしたてる石田に対しムキになって答えるサマは、子供同士のしょうもない言い合いのようで可愛い。

 第1話の依頼人である大庭蒼生(赤楚衛二)の隠し事を暴こうと、石田とある作戦をこっそり実行しようとしたがうまく進まず、「大庭にバレる!」とあたふたしているときもやはり可愛い。

 目、視線の細かい演技も見逃せない。第2話でゲストの宮野真守との最初の折衝の際、想定外の展開で言い負かされ、動揺を隠そうと笑顔をキープしながらもほんの一瞬眉間にシワが寄ってしまう様子はさすがだ。

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