西島秀俊演じる“おじさん”はなぜかわいい? 『ユニコーンに乗って』が描く成長のチャンス

なぜ西島秀俊演じる“おじさん”はかわいい?

 西島も小鳥も積み上げてきた確かなものがあるにも関わらず、そのキャリアを自らひけらかすような驕りはない。むしろ「能ある鷹は爪を隠す」のごとく、まるで小さなシジュウカラのように振る舞い、若き力から「学ばせてもらう」という謙虚さがベースにある。

 そして、いざその若さや勢いだけでは収拾がつかなくなったときには、経験をもとに落ち着きある行動に出る。そんな実は頼りがいのある「おじさん」が、健気にアップデートしようと取り組む姿は「かわいい」し、「すごい」し、「かっこいい」のだ。

 このドラマは主人公の若い佐奈たちが学び、成長していくのと同じく、小鳥の存在が何歳からでもそのチャンスはあるのだと示してくれるようだ。そのためには誇りを胸に秘め、プライドを捨てていく勇気のほうがよっぽど魅力的な人間だと見せてくれる。

 この作品において小鳥が銀行員として取引先企業との付き合いやアナログの体験会など地道な営業活動が活きたように、西島がこれまで培ってきたキャリアが垣間見えるシーンも多々あった。佐奈が思わず投資家の高山にパンチしそうになったのを止める場面は『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)で姫川の拳を素手で受け止めていた菊田を思い出す。また、朝から手料理を惜しむことのない丁寧な暮らしぶりは、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)のシロさんがよぎる。そんな西島が見せる安定感のある仕草が、まだ明かされていない小鳥のバックグラウンドを想像させる。もっと知りたいと思わせる魅力的なキャラクターとなっていく。

 この社会では「若者」と「おじさん」だけではなく様々なギャップがある。ものすごいスピードで情報が駆け巡る現代では、かつてどの時代にもなかったような格差が広がる可能性も。そんな分断が生まれやすい時代において、異なるものを見て生きてきた人を「もっと知りたい」と思わせる人がきっと必要なのだろう。イノベーションはいつだって既存の要素を掛け合わせるところから始まるのだから。

 その掛け合わせの最も身近な入口が「かわいい」なのではないだろうか。本作を見ながら、何歳になっても青春時代のようにワクワクしながら生きることへの憧れを持った人もいるはずだ。どうしたらそんなふうに日々を過ごすことができるのか。そのヒントは、西島から、そして小鳥から感じられる「誇りを持つ大人こそ、かわいくあれ」のマインドなのかもしれない。

■放送情報
『ユニコーンに乗って』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:永野芽郁、西島秀俊、杉野遥亮、坂東龍汰、前原滉、石川恋、青山テルマ、山口貴也、武山瑠香、広末涼子
脚本:大北はるか
プロデュース:松本友香、岩崎愛奈
演出:青山貴洋、棚澤孝義、泉正英
編成:青木伸介、森岡梢
主題歌:DISH//「しわくちゃな雲を抱いて」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
音楽:青木沙也果
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS/撮影:加藤春日
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/unicorn_ni_notte_tbs/
公式Twitter:@unicorn_tbs
公式Instagram:@unicorn_tbs
公式TikTok:@unicorn_tbs

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