『女が眠る時』ビートたけし×西島秀俊×ウェイン・ワン監督インタビュー
ビートたけし×西島秀俊×ウェイン・ワン監督が語る“映画と女” 新作『女が眠る時』インタビュー
『スモーク』(1995年)で第45回ベルリン国際映画祭審査員特別賞を受賞したウェイン・ワン監督が手がけた、初の日本映画『女が眠る時』が2月27日に公開される。妻の綾とバカンスを過ごすため、リゾートホテルを訪れた小説家の健二が、プールサイドで初老の男・佐原と若い女・美樹の姿に目を奪われたことから、次第に彼らを覗き見するようになり、常軌を逸した行動へと走っていく姿を描く。リアルサウンド映画部では、自身監督作以外での映画主演は12年ぶりとなるビートたけし、たけしとは昨年の『劇場版 MOZU』に続いての共演となる西島秀俊、そしてメガホンを取ったワン監督にインタビューを行い、撮影時のエピソードや本作についてそれぞれが感じたこと、解釈の仕方が何通りもある本作を通して、観客に訴えたかったことなどを赤裸々に語ってもらった。
「今回の作品では、我々は監督に翻弄された」(たけし)
ーーまず、脚本を読んだ時の感想をそれぞれ教えていただけますか。
ウェイン・ワン監督(以下、ワン):この作品は、ニューヨーカー誌に掲載されていたハビエル・マリアスによる短編小説が基になっていて、オリジナルストーリーの舞台はスペインでした。それを、日本の脚本家にお願いして、日本を舞台にしたものに書き直してもらいました。原作はとても複雑なものだったんです。特に、若い女性に対する佐原の執着は非常に哲学的なものでした。原作に忠実でありながらも、舞台を日本に変えたことで、そういう哲学的な側面をカットすることができ、よりインパクトのある内容になったと思います。もともと作家の傾向として、セリフに頼りすぎてしまうところがあるので、それは逆によかったですね。
ビートたけし(以下、たけし):俺は、「単なる変態オヤジだな」って(笑)。変態オヤジの役だから嬉しくもあり、悲しくもあり。だけどストーリーを追っていくと、これは非現実的な変わりものを見せているんじゃないかなという感じがして。休暇でリゾートホテルを訪れた作家夫婦に見せていることなのか、作家夫婦も含め、全体的な妙な世界を観客に見せているのか。最初はいろいろ考えたけど、そのまま撮影に入ったんで、まあ妙な性癖のある変なやつには間違いないということで、完成するまで言われた通りにやっていった。で、いざ出来上がった作品を観てみたら、現実なのか、非現実なのか、解釈のしようがいくらでもあって。俺は自分の中で一番面白いと思う解釈の仕方をしたけど、観る人によってそれぞれ違う解釈があるなと思った。
西島秀俊(以下、西島):僕は最初、ある不思議なカップルを覗き見しているような、エロティックなストーリーなのかなと思って。それで読み進めていくと、だんだんサスペンスのようになっていって、急に事件が起こったり、死が訪れたり……というようなストーリーが展開されていったので、非常に楽しく読めました。
ーータイトルにも入っている“女”という存在が重要な役割を果たしているわけですが、“女”という存在に対して、皆さんそれぞれどのような印象を抱いていますか?
たけし:まあ……西島くんは結婚してないもんな?
西島:いや、したんですよ(笑)。
たけし:えっ? あ、そうか。なんだ、言ってくれりゃ止めたのに。
一同:(爆笑)
たけし:カミさんはすごいですよ。女はすごい。あらゆるモノを持ってるから。基本的にすべての生き物は女で生まれて、そのまま女になるか、途中から男に変化するかだから。よく言われるけども、すべての可能性を持っているのはメスだよね。それに男が翻弄されていく。正直に言うと、今回の作品では、我々は監督に翻弄されたわけ。この監督は何を考えているんだろうかーー。俺は一体何をしてるんだろうかーー。途中から意味不明になっていった(笑)。
ワン:役者さんにはそのぐらいの演出でいいと思うんです。翻弄させたい。そうすると、役者さんは自分たちの本能に頼らざるを得なくなりますから。まあ、それは半分ジョークですけど(笑)。たけしさんには、この作品は彼が撮ってきた刑事モノやヤクザモノに近いんだということを伝えました。同意や裏切り、そして殺し。ある種の忠誠心についての映画でもあります。
ーー西島さんはいかがですか?
西島:たけしさんも言っていたように、この映画は本当にいろいろな解釈がある。あるスタッフが、すべてをコントロールしていたのは健二の妻なんじゃないかって言っていて。そう考えると怖いですよね。今回の映画を観ても、“女に翻弄される男”っていうのは感じます。全然違う視点で見ていますよね。実生活でも、こっちが必死でやっていることを、実はあんまり大したことだと思っていないっていうのを感じる時はあります。こっちは結構命がけでやってるんだけどなって(笑)。