柄本佑の“受け止め力”によって成り立つ『空白を満たしなさい』 真実の先にあるものは?
柄本佑が主演を務めるドラマ『空白を満たしなさい』(NHK総合)の折り返しに当たる第3話では、ついに物語の真相が明らかになる。
それは、徹生(柄本佑)はなぜ死んだのかという最大の謎。日本中の復生者が集う「復生者の会」に参加した徹生は、宿泊先の部屋で1枚のDVDを受け取る。そこに映し出されていたのは、徹生が会社のビルの屋上から飛び降りたとされる日の監視カメラの映像。屋上に続く扉の前で尻込みする自分の姿を、固唾を吞んで見守る徹生。自分は自殺をする人間なんかじゃない、誰かに殺されたんだーーそんな願いも虚しく、徹生は扉の先へと向かっていき、そのまま姿を見せることはなかった。つまりは、徹生の死因は自殺。「俺は、俺を殺した」と絶望する徹生だったが、彼にとってさらに残酷な真実が待ち構えていた。
「復生者の会」には、生前から徹生にまとわりつく佐伯(阿部サダヲ)の姿もあった。希望を求め参加してきた復生者(と思わしき人々)に対して、佐伯は「生き続けるのは地獄」だとネガティブな言葉を撒き散らしていく。「分からないでしょう、愛されないという孤独が。明日、みんな分かりますよ」と徹生に告げていた佐伯は、大勢の前で自殺を図る。それも人の自由意志だと主張する佐伯の手を握り、「死ぬな」と説得する徹生。佐伯を理解をしたつもりだった徹生だが、佐伯の一言で事態は急変する。
「待て、徹生。お前はまだ気づかないのか」
「お前を殺したのは、俺だよ。俺はお前が1歳の時に死んで復生したお前の父親だよ」
「俺がお前を殺したんだ」
呆気に取られ動けなくなる徹生。そのまま佐伯は徹生の手を振りほどき、バルコニーから姿を消していく。
この『空白を満たしなさい』は、「父が死んだのは36歳の時だった。いわゆるぽっくり病だった」という徹生の語りから始まっている。高校生だった徹生が1歳の時に父が死に、幽霊は信じないと同級生に言い放つ回想シーン。今、振り返れば全てはここに到るまでの潜在的なピースの一つひとつだったのだと納得できる。
徹生は3年間の空白を埋めるために自分から行動していくが、ここまでで自然と受け身の人間になってしまってもいる。そして千佳(鈴木杏)の必死な“作り笑い”に、空白の年月にあった妻の苦労と葛藤を、憎しみすら抱いていた人物が父であり自分を殺した張本人だという事実を知る。どうしても阿部サダヲの怪演や鈴木杏の凄みを感じさせる表情が印象に残るが、その演技を受け止める柄本佑がいてこそ成り立つシーンでもある。