香川照之の印象的な悪役3選 『六本木クラス』で体現する“既視感のない悪”にも期待

香川照之の印象的な悪役3選

 大ヒット韓国ドラマ『梨泰院クラス』を竹内涼真主演で日本版にリメイクした『六本木クラス』(テレビ朝日系)が7月7日より放送開始となる。東京・六本木を舞台に、絶望の淵に立たされた主人公・宮部新(竹内涼真)が復讐を誓い、金と権力を振りかざす巨大企業に屈することなく仲間と共に立ち向かっていく姿を描いた本作。新の宿敵となる「長屋ホールディングス」の会長・長屋茂役を務めるのは、俳優・香川照之だ。

 香川といえば、カマキリの着ぐるみを着た“カマキリ先生”に扮して、昆虫を紹介する特別番組『香川照之の昆虫すごいZ!』(NHK総合)に出演。子どもたちからは昆虫好きの面白いおじさんとして知られているが、俳優としては数々の戦慄走るアクの強い悪役を演じてきた。そのため、香川が長尾会長を演じることに対し、SNSではハマり役との声が挙がっている。今回は本作の放送開始に先立ち、特に印象深い香川の悪役を振り返ってみたい。

『半沢直樹』大和田暁

 香川照之と聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるのが、ドラマ『半沢直樹』(TBS系)の大和田常務ではないだろうか。大和田はかつて主人公・半沢(堺雅人)の父親を自殺に追い込んだ張本人で、2013年放送のシリーズ第1作目では自身の不正を暴こうとする半沢と熾烈な攻防戦を繰り広げた。

 メガバンク内の権力闘争を描いた本作は、金融の専門用語が飛び交う一見とっつきにくい作品でありながら、最高視聴率40%超えを記録。正義(=半沢)が悪(=大和田)を成敗する分かりやすい勧善懲悪のストーリー展開がビジネスマンの溜飲を下げる一方、歌舞伎仕込みとも言える香川の誇張された台詞回しや顔芸が、“リアル”を求める若者から逆にウケた。特にクライマックスで大和田が歯を食いしばり、屈辱にまみれて半沢に土下座するシーンは伝説として日本ドラマ史に残っている。

 そんな大和田がシリーズ第2作目では原作にない“オリジナルキャラ”として登場し、ラスボスだった前作をも上回る爪痕を残した。香川の怪演ぶりは健在で小憎たらしく「おしまいDEATH!」「施されたら施し返す、恩返しです」などの名言を連発しながらも、最終的には宿敵である半沢と共闘し、巨悪・箕部幹事長(柄本明)を倒す熱い展開に。半沢に執着し続ける姿がもはや愛らしく、不思議と憎めない人気キャラへと進化を遂げた。

『カイジ 人生逆転ゲーム』利根川幸雄

 『半沢直樹』よりも前に、香川が悪役としてインパクトを残したのは、2009年公開の映画『カイジ 人生逆転ゲーム』。香川は同作で、カイジ(藤原竜也)ら多額の負債を抱えた者たちが挑む、命を懸けた究極のゲームを仕切る大手金融業者の幹部・利根川を演じた。

 その冷徹ぶりは大和田以上。「金は命より重い」という台詞が物語るようにゲーム参加者を奴隷のごとく扱い、落ちたら即死の高層ビルでの鉄骨渡りを不敵な笑みを浮かべながら高みの見物を決め込む姿は狂気じみている。だが『半沢直樹』の時と同じく、香川の本領が最も発揮されるのは窮地に追い込まれた時のリアクションだ。

 ラストで行われたカイジとの「Eカード」対決では、優秀さ故に彼が仕掛けた罠にまんまとハマり敗北する利根川。まばたきの一切ない呆気にとられた表情、そこから敗北を実感し、徐々に苦悶の表情へと変わっていく。プライドの高い人間が、自分より劣っていると判断した相手に敗北するとどうなるか。その最適解をいつも香川は芝居で見せる。

 かくして失脚した利根川だが、大和田と同じくシリーズ2作目『カイジ2〜人生奪回ゲーム〜』では、カイジと共闘。元々幹部の中でも、群を抜いて優秀な彼が味方についたことは視聴者にも大いに安心感を与えた。

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